マンガ『九条の大罪』(真鍋昌平/週刊ビッグコミックスピリッツ連載中)より
「刑事事件自体をやりたがらない弁護士は、けっこう多いですね。国選弁護人は、登録した弁護士しか割り振られません。たとえば『通常事件用名簿』『裁判員裁判事件用名簿』などがあり、その名簿に登録しなければ国選弁護人をやることはありません。その名簿に載せていないという弁護士もたくさんいるのです。
一方で、いまは弁護士の数が昔に比べて圧倒的に増えていますから、国選弁護の事件が取り合いになっています。かつては国選弁護だけで生活していた弁護士もいたようですが、最近では抽選になることもあります」
刑事弁護を専門にする弁護士も最近では出てきているが、生活のために刑事弁護を受任するケースは少なくないという。
では、果たして実際に、弁護士の指示で証拠を隠蔽したり、黙秘させたりするようなことはあるのだろうか。一方で、検察側においても、かつては大阪地検の証拠改ざん事件のような事件もあったわけだが──。
「例えるなら検察は『攻撃』で、弁護人は『防御』。法廷での両者の攻防で真実を解明していくわけです。もちろん検察官は公益の代表者なので、白いものを黒にするわけでもないし、無罪の可能性のある事件を有罪にするわけではない。量刑についても、何がなんでも重くしようとか、量刑相場的に執行猶予でもいいのに、無理やり実刑を求めようというように、少なくとも僕自身は考えていませんでした。
それは弁護人の側も同じです。立場は違えど、適正な量刑・適正な手続きに向かっていくという根本的な目的は検察側と同じだと思います。でも、それを理解してやっている人ばかりかと言うと、そうではないですね」
では、刑事弁護人の腕の見せ所とは、どんなところに現れるのか。
「例えば、ある被告人に対して、警察官や検事の厳しい取り調べが続いているとします。そのとき、きちんと被告人と接見し、どんなことを聞かれているか尋ね、状況に応じた適切なアドバイスをすることはとても重要です。接見で被告人から話を聞くことで、検事の考える『事件の見立て』が見えてきます。それに対して、弁護人の立場から適切な助言をする。それをきちんとやっていなかったばかりに、被告人が重い罪で起訴されたりする場合もあります」