国内

高齢者でもがん治療はできる セカンドオピニオンの重要性

(写真/GettyImages)

高齢者のがん治療法は延命かQOLを吟味する(写真/GettyImages)

 日本人の死因第1位の「がん」。その治療の目標はもちろん完全治癒だ。一般的にはがんの種類や病期別に検討され、有効性が科学的に証明された“標準治療”(手術、抗がん剤、放射線)が推奨される。

 ところが75才以上の高齢者の場合は少々事情が違う。静岡県立静岡がんセンター総長の山口建さんはこう解説する。

「標準治療の科学的根拠の裏付けになる臨床試験は主に70代前半以下のがん患者さんが対象です。つまりそれより高齢の人に対する治療効果は定かではないのです。そのためおおむね75才以上の人に対する治療法は、担当医が経験に基づいて、患者本人の体力、気力、理解力などを考慮し、検討することになります。

 比較的簡単な治療で済む場合はもちろん完治を目指して行いますが、若い人に比べて全身状態が衰えている高齢者は、治療の結果、かえって余命が短くなったり、副作用や合併症、後遺症で生活の質(QOL)が低下した状態になったりするリスクもあるのです。検討の結果、治療しないと決めた場合は、緩和ケアなどでできるだけQOLを維持した生活を続けることを目標にします」(以下同)

 ちなみに、患者本人に認知症があると、たとえば手術後のセルフケアが困難で合併症などのリスクが上がるため、治療方針にも大きく影響する。重い認知症のある人は大きな手術は難しいのが現状だ。

「治療方針の選択は、どんなに高齢でも患者さん本人の意向を優先するのが大原則です。実際には“わからないから息子や娘に任せる”ということもよくありますが、いずれにしても本人と家族と医師が情報や気持ちを共有し、話し合いながら決めていきます。家族は本人に寄り添いつつ、医師とのコミュニケーションをよい形でリードするのも大切な役割です」

最新の情報収集と小さな勇気をもって

 慎重な治療法の選択が迫られる“75才以上”“認知症の人”というのは、あくまでも目安。一方で薬や治療法は日進月歩で、新たな可能性もどんどん広がりつつある。

「たとえば内視鏡治療、腹腔鏡下手術などの低侵襲性手術は高齢者でも体への負担を抑えて行える治療法。また標準治療で使われる抗がん剤より効果はやや劣るけれど、副作用の少ない抗がん剤も出てきています。

 肺がんは難治といわれる一方で、早期なら放射線3〜4回の照射で完治させることもできるようになってきました。90代で早期の肺がんが見つかって、がん治療の経験が少ない医師が“看取りましょう”といっても、専門病院なら数回の放射線治療で治せるかもしれない時代なのです」 

関連キーワード

関連記事

トピックス

運転席に座る広末涼子容疑者
《事故後初の肉声》広末涼子、「ご心配をおかけしました」騒動を音声配信で謝罪 主婦業に励む近況伝える
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
鶴保庸介氏の失言は和歌山選挙区の自民党候補・二階伸康氏にも逆風か
「二階一族を全滅させる戦い」との声も…鶴保庸介氏「運がいいことに能登で地震」発言も攻撃材料になる和歌山選挙区「一族郎党、根こそぎ潰す」戦国時代のような様相に
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏に「自民入りもあり得るか」聞いた
【国民民主・公認取り消しの余波】無所属・山尾志桜里氏 自民党の“後追い公認”めぐる記者の直撃に「アプローチはない。応援に来てほしいくらい」
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
サークル活動に精を出す悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《普通の大学生として過ごす等身大の姿》悠仁さまが筑波大キャンパス生活で選んだ“人気ブランドのシューズ”ロゴ入りでも気にせず着用
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
遠野なぎこさん(享年45)、3度の離婚を経て苦悩していた“パートナー探し”…それでも出会った「“ママ”でいられる存在」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
「週刊ポスト」本日発売! 石破政権が全国自治体にバラ撒いた2000億円ほか
NEWSポストセブン