超高齢だから、認知症だから、難治がんだから「治療はムリ」と大ざっぱな固定観念にとらわれていると、貴重な可能性を見失うことになる。
「患者さんの状況にもよりますが、担当医の説明に納得できない、ほかの治療法を探りたい場合は、セカンドオピニオンという選択肢もあります。セカンドオピニオンは担当医とは別の専門医に意見を求め、その第二の意見を担当医のもとに持ち帰り、考慮して、よりよい治療に生かすためのもの。このプロセスの後に転院を希望することもできます。いまはセカンドオピニオンの重要性が周知され、ほとんどの医師が協力的。担当医への遠慮もあるでしょうが、そこは家族が小さな勇気をもって臨んでほしいですね」
また、ある程度大きな治療を受けた場合は、退院帰宅後の医療・介護態勢を整えておく必要がある。どんな準備が必要か、治療した担当医や医療スタッフに確認。介護保険も利用できるよう、親の居住地の地域包括支援センターやケアマネジャーに事前に相談しておくこともおすすめだ。
「がん治療に向き合うには知識や情報が重要です。がんについての確かな情報収集や相談には、全国各地にある“がん診療連携拠点病院”も活用するとよいでしょう」
老親ががんになったら、不安な気持ちに寄り添いながら、情報を収集して柔軟に治療方針を模索する。家族は重要な2つの役割を担うことを、しっかり心得ておきたい。
【教えてくれたのは……】
山口建さん/静岡県立静岡がんセンター総長。国立がんセンター(現・国立がん研究センター)研究所副所長、宮内庁御用掛などを経て現職。最先端がん医療の実践とともに、徹底した患者家族支援を進め、2012年、センターとして朝日がん大賞受賞。厚生労働省がん対策推進協議会会長。著書に『親ががんになったら読む本』(主婦の友社刊)など。
取材・文/斉藤直子、イラスト/やまなかゆうこ
※女性セブン2020年12月17日号