老練なマコネル院内総務は表情には出さず「トランプ支援」を継続か(AFP=時事)
それらを考えると、トランプ大統領の反撃は、それもこれまでで最も強い反撃は、バイデン氏とハリス氏がそれぞれ大統領、副大統領に就いてからだと予測される。民主党とバイデン政権がバラバラになるまでやるだろう。そうでなくとも民主党は内部分裂し、派閥争いの様相を呈しているのだから、トランプ氏とマコネル氏にとって攻めどころはいくらでもある。サンダース氏やウォーレン氏、そしてハリス氏といった社会主義思想に偏った人たちが党内で力を持って、本来は主流派であるはずの穏健派の民主党員の姿がかすんでいる。
そして、ある民主党幹部によれば、党内でバイデン氏の高齢と過去の病歴が密かに心配されているのだという。トランプ大統領と共和党保守派は、バイデン政権は長くは続かない、政権発足と同時に内紛でトラブルに陥ると見ているようだ。下野したトランプ氏は、文字通り言いたい放題になるだろう。いまだにトランプ氏の敗北を認めない支持者は、7500万人ではないとしても、1000万人単位で残っている。バイデン氏が「多様性を重視する」として指名した閣僚候補には、女性や少数民族出身者、性的少数者らが多い。トランプ氏らは彼らを徹底的に攻撃しようと手ぐすね引いている。さすがにマイノリティであることそのものは攻撃材料にしないだろうが、閣僚候補のなかには筆者から見ても疑問のある候補がいる。攻撃材料はたくさんあるだろう。そこをしつこく突き、“ほらみろ、左翼の政権はダメじゃないか”という印象をつけることは難しくなさそうである。
大統領選挙と、同時に行われた議会選挙で、民主党とバイデン氏は、コロナ対策を材料にトランプ政権を攻撃した。一方の共和党とトランプ氏は、民主党の左傾化を攻撃した。その意味で、ワクチン開発の成功は大きい。トランプ氏の貢献かどうかはともかく、世界で最も早くワクチンを実用化し、すでに猛烈な勢いで接種を進めていることは、国民のマインドをガラッと変える可能性がある。それを自分の手柄だとトランプ氏が言い張るのは当然で、民主党はトランプ批判の材料を失い、トランプ陣営はますます民主党を攻撃する材料を手に入れるのだ。この反撃は、これまでで一番、トランプ氏の優勢になるだろう。