不審行動を探知する「AI大魔神」の実力
そうした中、一向に減らない万引き被害を未然に防止する人口知能(AI)搭載の防犯システムが注目を集めている。
このシステムは「AI大魔神」というユニークな名前で、開発したのは東京・港区のIT会社「アースアイズ」。今年8月に発表して以来、問い合わせが相次ぎ、全国のスーパー、ドラッグストア、書店などに導入している。ロシアやタイなどからも商談が舞い込んでいるという。
気になるシステムはどうなっているのか。同社のショールームで同社の山内三郎代表(55)に説明してもらった。基本的には、店内に設置したカメラが来店者の動きを撮影。その映像を基にAI大魔神(サーバー)が挙動不審者を探知し、アプリを導入した店員のスマホに通知する。店員は挙動不審者に声掛けをすることで、万引きを未然に防ぐという流れだ。
実際、ショールームの商品棚の前で筆者が商品を見定めた後、周囲をキョロキョロ見回すといった行動を取って見た。すると、映像が映し出されるモニター画面に変化が起こった。
最初は筆者の体の周囲の枠が白で表示されていたのが、キョロキョロを探知すると枠の色が黄色に変化。さらにAI大魔神が「万引きリスクが高い」と判定して枠が赤に変わり、店員のスマホに通知したのである。なるほど、あざやかな連携プレーである。
だが、AI大魔神は何を根拠に挙動不審と判断するのだろうか。
「万引き犯の行動パターンは、スーパー、書店、ドラッグストアなど店舗の種類によって異なります。それぞれの行動パターン数百の情報を認識させておくのです。店舗によってカスタマイズも可能です」(山内代表)
例えば、書店は変に動き回ると目立つので立ち止まっての行為が多い。本棚の前で立ったりしゃがんだりしながら本に手を付ける。逆にスーパーの場合は、カートを押して動きながらの行為となり、人目に付きにくいスペースで隠すというパターンだ。
さらに詳細な行動パターンを聞きたかったのだが、ここで明かしてしまうと真似をされたり、警戒されてしまうとのことで、やんわりと断られた。
導入後の効果は大きかった。ある化粧品チェーンでは被害額が導入前の320万円から123万円へと61.5%低下した(半期実績)。ドラッグストアは67.5%とさらにロス改善率が高かったという。