国内

「天皇制の本質的問題」を紐解く 知られざる「尊号一件」

評論家の呉智英氏

天皇制の本質的問題について評論家の呉智英氏が論じる

 日本の皇室の血統・世襲の問題をどう考えるか。江戸時代後期に起きた「尊号一件(そんごういっけん)」という事件を例に、いまも眞子内親王の結婚報道をめぐって起きている心情論と法律論の対立について、評論家の呉智英氏が論じる。

 * * *
 秋篠宮家眞子内親王の婚約・結婚関連の報道がマスコミをにぎわしている。マスコミがあれこれ詮索することになるのは、血統・世襲による天皇制の本質的問題が根底にあるからだ。血統によらない帝政であれば、同じ事態が起きてもこれほどの騒ぎにはならない。

 というと、血統によらない帝政なんてあるのかという声も聞こえてきそうだが、世界史の授業で暗記させられたローマの五賢帝のうちには傍系の人もいるし、全く血縁のないトラヤヌス帝もいる。これは先月刊行の本村凌二『独裁の世界史』でも論じられている。

 皇帝と天皇は別ものと思う人もいるかもしれないが、「大日本帝国」は「皇国」である。英語ではどちらもEmperorだ。

 皇室に親しみを持つ国民がふえていると言われながら、天皇制そのものについては知られていないことは多い。女系・女帝など「お世継ぎ」問題は関心を持つ人も出てきたが、これと関連する「尊号一件(尊号事件)」はほとんど知られていない。これは江戸後期に勤皇運動とからんで問題となり、明治になってからも跡を引いた。

 かく言う私も二十数年前、吉村昭『彦九郎山河』を読むまで知らなかった。日本史の教科書だけでなく受験参考書の井上光貞『日本史』にも一行も触れられていない。

 さすがに平凡社の『日本史大事典』には出ている。

「江戸時代後期、光格天皇がその父である閑院宮典仁親王に太上天皇(譲位した後の天皇)の尊号を贈ろうとして、幕府に拒否された事件」

 光格天皇は第百十九代天皇である。しかし、その先帝第百十八代天皇、後桃園天皇は光格天皇の父ではない。祖父でも伯父でもない。後桃園天皇から四世代(皇位では五代)溯った東山天皇から分かれた閑院宮直仁親王の孫に当たるのが光格天皇である。

 現在、皇位継承者がいなくなる事態を避けるため「宮家復活」を検討する声があるのも、こうした先例があるからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン
レッドカーペットを彩った真美子さんのピアス(時事通信)
《価格は6万9300円》真美子さんがレッドカーペットで披露した“個性的なピアス”はLAデザイナーのハンドメイド品! セレクトショップ店員が驚きの声「どこで見つけてくれたのか…」【大谷翔平と手繋ぎ登壇】
NEWSポストセブン
竹内朋香さん(左)と山下市郎容疑者(左写真は飲食店紹介サイトより。現在は削除済み)
《浜松ガールズバー殺人》被害者・竹内朋香さん(27)の夫の慟哭「妻はとばっちりを受けただけ」「常連の客に自分の家族が殺されるなんて思うかよ」
週刊ポスト
真美子さん着用のピアスを製作したジュエリー工房の経営者が語った「驚きと喜び」
《真美子さん着用で話題》“個性的なピアス”を手がけたLAデザイナーの共同経営者が語った“驚きと興奮”「子どもの頃からドジャースファンで…」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン