オンラインデートは「聞きたいことが聞きやすく、進展が早かった」と語る
30歳前後。結婚に、出産に、仕事に、モヤモヤを抱える時期だ。仲がいいからこそ友人と自分を比べてしまう。酒が入り、本音がエスカレートし、言わないでいいことまで言ってしまうこともあるだろう。だがそれが度重なると、友情にヒビが入っていく。黒いものを意識し出すと、無意識だったころに戻るのは難しい。
「入社以来、大人の関係を続けてきたけど、潮時かな、と思って。友だちを嫌いにはなりたくなかったので、少し、距離を置くようになりました」
それが約1年前。手帳から女子会の予定が消えたのは淋しかったが、その後、コロナの感染拡大に伴い、もはや誰とも会えなくなっていった。
◆マウンティングされても、幸せだから大丈夫
何かを得るには、先に何かを手放す必要があると言われる。美莉さんと航さんとの出会いはまさにその格言を体現するものだった。
「同期の友達に依存していたつもりはなかったんですが、会わなくなると淋しかったんです。すごく深い付き合いでなくても、定期期に会う存在って、大事なんだなと実感しました。友人に『結婚できない』と言われたことも、正直、引っかかっていましたね。傷ついたし、そんなことないんじゃない? と反撥する気持ちもあって、私も結婚したいなと思うようになったんです」
在宅勤務を続けていた美莉さんは、緊急事態宣言が開けると、週に数日は出勤するようになった。普段より出社している社員が少ない職場で、これまであまり接点のなかった3つ年上の航さんと、帰り際に一緒になった。
「チームが違うので仕事での接点はないのですが、同じフロアにいるので、お互い、顔は知っていました。宅ワークはどんな感じ? とか、コロナ大丈夫? とか、世間話をしたくらいですが、出勤日が重なることが多くて、そこから少しずつ、仲良くなっていったんです」
夏には第2波が来たため、気軽に食事に行くようなタイミングはほとんどなかったが、ラインをやり取りし、オンライン飲みをするようになった。そこでわかったのは、航さんは、以前から、仕事熱心な美莉さんに好意を寄せていたのだという。
「嬉しかったですね。やっぱり私が頑張ってきたのは仕事だったので、それを見てくれていたというのにぐっときました。ただ、これまでは、話しかける隙がなかったと(笑)。私、肩肘張って生きていたのかもしれませんね。誰にも本音を見せずに頑張っちゃってたというか。同期の友達にも、それを見抜かれていたのかもしれません。コロナで少し鎧を外せた面があったのかも」
ほどなく二人は付き合うようになり、航さんの家でデートをするようになった。コロナもあって同期の女子会はその後も開催されていないが、美莉さんは、彼氏ができたことを報告したいと考えている。
「一年前に独身だった二人も、まだ結婚はしていないようです。私が結婚する予定と言うとびっくりされるかもしれませんが……、私が楽しい会社生活を送れているのは同期のおかげもあるので、感謝の気持ちも込めて報告したいと思っています。そこでまたマウンティングされても……幸せなのでたぶん大丈夫です(笑)」
(名前はすべて仮名です)