国内

好きなものに囲まれて逝った40代オタク男は「孤独死」だったのか

好きなものに囲まれて人生を終えた(イメージ)

好きなものに囲まれて人生を終えた(イメージ)

 高齢者の問題として話題になることが多かった「孤独死」だが、単身世帯(一人暮らし)が全年代で増えているいま、年齢を問わない問題になりつつある。そして2020年7月には、遺品整理や特殊清掃を行う株式会社ToDo-Companyから「オタクの孤独死が急増」と発表されたのを目にして、落ち着かない気持ちになった一人暮らしの人も少なくないだろう。俳人で著作家の日野百草氏が、好きなものに囲まれてこの世を去ったオタクの死について考えた。

 * * *
「葉月のやつ、まだブラウン管だったのか、最期まで変わらないな」

 限りなく埼玉に近い東京都区部、親御さんの許可をいただき見慣れたアパートの一室に入る。もう20年以上前か、このアパートでネオジオの格闘ゲームに興じたり、古いアニメを見てはああでもない、こうでもないと一晩中語り合ったのは。部屋の中は驚くほど変わっていない。時が戻ったみたいだ。このアパートの住人は、葉月くん(40代、仮名)。彼は『闘神都市』というゲームのヒロイン、瑞原葉月が好きだったので葉月にさせていただく。

「でもこのベガどうするんだろうね、俺はいらないぞ」

 大切なものは親御さんがすでに回収したため、残ったものは形見分けでいただけるという。オタクの形見分けなんて、昔々、かがみあきらという天才漫画家が急死した時の逸話を思い出す(真相は知っているがそこは省く)。もちろん業界の先輩から聞いただけの話だが、旧友の形見分けなんて ―― 我々は、もうそんな年齢になったのだ。

「うわ、映るよすごいね、昔の日本製は優秀だ」

 さっきから色々やかましい男は元同僚の岸田くん(仮名、40代)、彼もまた、葉月くんとは古くからの知り合いだ。彼はベガが残っていたことに興味津々だ。ベガ(WEGA)はソニーの誇るトリニトロンカラーテレビ、2007年にシリーズ生産終了している平面ブラウン管初期の傑作機である。まして葉月くんのベガはハイビジョン32型である。消費税5%(当時)に諸経費で50万円くらいしただろうか、筆者もコレクションとして欲しいが重さ約70kg、床がフローリングでなく畳だったらめり込んでいたに違いない。ちなみに岸田くんは映像マニア、特撮ドラマ『怪奇大作戦』の「狂鬼人間」における岸田森の発狂シーンが大好きなので岸田とさせていただく。

「なんか、羨ましいよな、ここまで変わらないまま死ぬってのも」

関連記事

トピックス

安福久美子容疑者(69)の学生時代
《被害者夫と容疑者の同級生を取材》「色恋なんてする雰囲気じゃ…」“名古屋・26年前の主婦殺人事件”の既婚者子持ち・安福久美子容疑者の不可解な動機とは
NEWSポストセブン
ブラジルにある大学の法学部に通うアナ・パウラ・ヴェローゾ・フェルナンデス(Xより)
《ブラジルが震撼した女子大生シリアルキラー》サンドイッチ、コーヒー、ケーキ、煮込み料理、ミルクシェーク…5か月で4人を毒殺した狡猾な手口、殺人依頼の隠語は“卒業論文”
NEWSポストセブン
9月6日に成年式を迎え、成年皇族としての公務を本格的に開始した秋篠宮家の長男・悠仁さま(時事通信フォト)
スマッシュ「球速200キロ超え」も!? 悠仁さまと同じバドミントンサークルの学生が「球が速くなっていて驚いた」と証言
週刊ポスト
ソウル五輪・シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング=AS)銅メダリストの小谷実可子
《顔出し解禁の愛娘は人気ドラマ出演女優》59歳の小谷実可子が見せた白水着の筋肉美、「生涯現役」の元メダリストが描く親子の夢
NEWSポストセブン
ドラマ『金田一少年の事件簿』などで活躍した古尾谷雅人さん(享年45)
「なんでアイドルと共演しなきゃいけないんだ」『金田一少年の事件簿』で存在感の俳優・古尾谷雅人さん、役者の長男が明かした亡き父の素顔「酔うと荒れるように…」
NEWSポストセブン
マイキー・マディソン(26)(時事通信フォト)
「スタイリストはクビにならないの?」米女優マイキー・マディソン(26)の“ほぼ裸ドレス”が物議…背景に“ボディ・ポジティブ”な考え方
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
《かつてのクマとはまったく違う…》「アーバン熊」は肉食に進化した“新世代の熊”、「狩りが苦手で主食は木の実や樹木」な熊を変えた「熊撃ち禁止令」とは
NEWSポストセブン
アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン