スポーツ

コロナで日本のジュニアテニス選手の世界進出が阻まれる危機的状況に

全仏オープンに参加する海外のジュニア選手たち(提供:Team Macy沢田昌昭)

昨年、全仏オープンに参加する海外のジュニア選手たち(提供:Team Macy沢田昌昭)

 新型コロナウイルスは東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、多くのスポーツイベントを中止・延期に追い込んだ。2020年にかけていたアスリートの落胆は多数報じられたが、今回のコロナ禍でスポーツが満足にできなかったことは子供達にも大きな影響を与えている。

「世界で戦えるジュニア」の育成活動や国内テニス普及活動にも精力的に参加するプロテニスプレイヤー・笹原龍氏が、ジュニアテニスの現状と今後の課題について警鐘を鳴らす。

 * * *
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、各国のプロスポーツが軒並み中止・延期となり、世界中から一斉にスポーツが消える事態となりました。それは、ジュニアスポーツも避けては通れませんでした。

 2020年8月中旬、世界のテニス界は6か月ぶりに、プロ、ジュニア含め国際大会が開催され、全米オープン、全仏オープンが復活を遂げました。中止されていた6か月間を振り返ると、積極的に道を切り開こうとした欧州の姿勢と、社会や学校は動きだしてもスポーツの再開にはやや消極姿勢の日本との違いが鮮明に浮き上がったと感じています。

 海外のテニスはITF(国際テニス連盟)が中心となり、世界中の政府、各国のテニス協会と情報を共有し、同連盟のサイトを通じ毎週状況報告が世界中に伝えられていました。こうした情報の積み上げと発信をベースとし、国際世論への理解や国際大会の再開へ向け積極的な議論が行われたのです。そのうえで、再開へのプランが練り上げられ、年内のトーナメントスケジュール策定、ランキングシステムのコロナ対応(プロテクトランキング含む)、大会開催におけるプロトコル(規約)の整備等の大きな課題を乗り越えました。こうした緻密な情報交換や議論を経て、8月31日からジュニアの国際大会を含めてヨーロッパを軸に復活しました。

 世界中が大変な時を共に過ごしましたし、各国の調整は困難なものでしたが国際大会が復活に至るまでには僅か6か月しか要さなかったのです。そして、トーナメントが再開し、世界が一度動き出すと、そのスピードは一気に加速していきました。大坂なおみ選手が9月に全米オープンで優勝したことを覚えている方も多いでしょう。

なかなか前に進めなかった日本と世界から離される状況

 その頃の国内テニスは、世界が動き出したにもかかわらず、まだ国内大会すら再開できていない状況でした。「今は、練習どころか外に出るべきではない」世間の空気がある中で、積極的に選手、ジュニアが国際大会に参戦することはできなかっただろうと思います。現在の国際大会のランキングシステムであるポイントテーブルの特徴からすると、この時点で国内のジュニアは、約2年分の遅れを背負ってしまったと考えています。2021年、2022年度、日本人ジュニアのグランドスラム出場が危ぶまれる状況は想像できることでしょう。この数か月の遅れがもたらした影響は大きく、日本のアスリートの将来を考えれば、知らなければならない現実です。

 今後、国内ジュニアが国際大会の舞台を目指していくのであれば、日本と世界の感覚の距離感は、大きな「問題」であり「縮めなければならない課題」であると私は感じています。こうしたことを論じることが、我々スポーツに携わる者に求められる「これからのwithコロナ」への考え方になり、社会へのメッセージにつながってくるだろうと考えています。

 2020年度から、ITFジュニアのポイントテーブルの改正が行われました。これは過去最大の改正であると言えるでしょう。テニスの大会にはグレード(最上位のAおよびG1~5の6段階)が設定されていて、グレードの高い大会に出場し、上位になるほどポイントが多くもらえるシステムですが、今回の改正の最大の特徴は、G3を境にして下のグレードのポイントは据え置き、上のグレードのポイントが軒並み大幅に上乗せされたことにあります。

関連キーワード

関連記事

トピックス

レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《産後“ファッション迷子期”を見事クリア》大谷翔平・真美子さん夫妻のレッドカーペットスタイルを専門家激賞「横顔も後ろ姿も流れるように美しいシルエット」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
《訃報》「生きづらさ感じる人に寄り添う」遠野なぎこさんが逝去、フリー転向で語っていた“病のリアルを伝えたい”真摯な思い
NEWSポストセブン
なぜ蓮舫氏は東京から再出馬しなかったのか
蓮舫氏の参院選「比例」出馬の背景に“女の戦い”か 東京選挙区・立民の塩村文夏氏は「お世話になっている。蓮舫さんに返ってきてほしい」
NEWSポストセブン
泉房穂氏(左)が「潜水艦作戦」をするのは立花孝志候補を避けるため?
参院選・泉房穂氏が異例の「潜水艦作戦」 NHK党・立花孝志氏の批判かわす狙い? 陣営スタッフは「違います」と回答「予定は事務所も完全に把握していない」
NEWSポストセブン
レッドカーペットに登壇した大谷夫妻(時事通信フォト)
《真美子さんの艶やかな黒髪》レッドカーペット直前にヘアサロンで見せていた「モデルとしての表情」鏡を真剣に見つめて…【大谷翔平と手を繋いで登壇】
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と浜辺美波のアツアツデート現場》「安く見積もっても5万円」「食べログ予約もできる」高級鉄板焼き屋で“丸ごと貸し切りディナー”
NEWSポストセブン
誕生日を迎えた大谷翔平と子連れ観戦する真美子夫人(写真左/AFLO、写真右/時事通信フォト)
《家族の応援が何よりのプレゼント》大谷翔平のバースデー登板を真美子夫人が子連れ観戦、試合後は即帰宅せず球場で家族水入らずの時間を満喫
女性セブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《永瀬廉と全身黒のリンクコーデデート》浜辺美波、プライベートで見せていた“ダル着私服のギャップ”「2万7500円のジャージ風ジャケット、足元はリカバリーサンダル」
NEWSポストセブン
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落の原因は》「なぜスイッチをオフにした?」調査報告書で明かされた事故直前の“パイロットの会話”と機長が抱えていた“精神衛生上の問題”【260名が死亡】
NEWSポストセブン
亡くなった三浦春馬さんと「みたままつり」の提灯
《三浦春馬が今年も靖国に》『永遠の0』から続く縁…“春友”が灯す数多くの提灯と広がる思い「生きた証を風化させない」
NEWSポストセブン
鉄板焼きデートが目撃されたKing & Princeの永瀬廉、浜辺美波
《タクシーで自宅マンションへ》永瀬廉と浜辺美波“ノーマスク”で見えた信頼感「追いかけたい」「知性を感じたい」…合致する恋愛観
NEWSポストセブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン