そもそも今のコロナの状況下でオリンピック開催を目指すこと自体に異を唱えるのは、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏だ。
「オリンピック選手が特権を持っているわけではないのです。彼らだって、どれだけの人がコロナで死に瀕しているかわかっているなら、自分たちだけ優先されることに疑問を持つはずです。そういうことを、IOCのバッハ会長や組織委員会の森喜朗さんは考えていないし、理解していない。人道無視で、選手すら商売の道具や商品としか見ていないことがよくわかります。ワクチンを豊かな国が買い占めて、貧しい国には回らないという現実があるなかで、カネになる選手たちには優先的に接種して、道具として機能させようというとんでもない発想です。東京五輪は一刻も早く中止すべきです。
日本のスポーツ界では、もともと選手たちの声が小さく弱い。こういう時こそ明確な自覚を持って事態に向き合い、スポーツの主役は自分たちだということ、スポーツの原点はフェアプレーであること、したがって今はオリンピックどころではないことを訴えてほしい」
優先接種の是非については多様な意見があるだろうが、そもそもコロナワクチンがスポーツとは相いれない可能性について言及したのは、医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏だ。
「ワクチンを打てば選手たちの感染を防ぐことはできると思います。ただ、接種後は短期的に炎症が強くなったり、筋力が強くなったりするので、アスリートの体やパフォーマンスに影響が出るかもしれません」
もしそのような副反応があるなら、ワクチンの優先接種は、全オリンピアンにドーピングを強制することにもなりかねない。