国際情報

天安門事件での鎮圧を拒否した少将が死去 民主化指導者ら追悼

民主化を求める学生らの鎮圧を拒否した徐勤先氏の訃報

民主化を求める学生らの鎮圧を拒否した徐勤先氏の訃報

 1989年の天安門事件の際に民主化を求める学生らの鎮圧を拒否した中国人民解放軍の元少将が1月8日、中国河北省石家荘市の自宅で死去していたことが分かった。元少将は河北省保定市に本部を置く陸軍第38集団軍のトップだった徐勤先氏で、85歳だった。徐氏は1989年5月、北京市に戒厳令が敷かれると、学生らの民主化運動を鎮圧するため、出動を命じられたが、「人民に武器を向け、殺して、歴史の罪人になるのは嫌だ」と命令を拒否。その後、逮捕され、軍事裁判所で懲役5年の刑を受けた。

 徐氏の存在は釈放後、香港紙などで報じられ、広く知られることとなった。死去の報を受けて、当時の学生の運動を引っ張った王丹氏ら民主化運動指導者は「中国人民解放軍のなかでも数少ない良心的な将軍であり、中国軍の模範になるような軍人だった」とコメント。ほかにも多くの追悼の言葉が寄せられている。香港の公共放送「RTHK」などが報じた。

 徐氏は1950年、15歳の時に、朝鮮戦争(1950年6月~1953年7月)に参戦した中国人民志願軍への入隊を希望したが、一度は年齢を理由に拒否されたものの、血判書を書いて入隊が認められた熱血漢だったという。1987年には、第38集団軍の少将(司令官)に就任した。

 第38軍は軍部隊の中でも、首都北京防衛の要となる部隊で、中国軍の中でも最も精鋭ぞろいとして知られていた。

 1989年春に北京の学生らによる民主化運動が拡大すると、当時の最高実力者、トウ小平氏ら最高指導部が軍の出動を決定したことを受けて、徐氏らの部隊にも出動の命令が下った。

 徐氏は命令を拒否したことで、身柄を拘束され、軍法会議で懲役5年となり一時、軍拘置所に収容されたが、その後、設備が整った北京市郊外の秦城監獄に移送された。テレビを見ることができる1人部屋に入るという、特別待遇だった。これは当時の軍最高幹部の楊白冰・中央軍事委員会秘書長が徐氏に同情しての特別な措置をとったものと伝えられている。

関連記事

トピックス

大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
華々しい復帰を飾った石原さとみ
【俳優活動再開】石原さとみ 大学生から“肌荒れした母親”まで、映画&連ドラ復帰作で見せた“激しい振り幅”
週刊ポスト
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
死体損壊容疑で逮捕された平山容疑者(インスタグラムより)
【那須焼損2遺体】「アニキに頼まれただけ」容疑者はサッカー部キャプテンまで務めた「仲間思いで頼まれたらやる男」同級生の意外な共通認識
NEWSポストセブン
学歴詐称疑惑が再燃し、苦境に立つ小池百合子・東京都知事(写真左/時事通信フォト)
小池百合子・東京都知事、学歴詐称問題再燃も馬耳東風 国政復帰を念頭に“小池政治塾”2期生を募集し準備に余念なし
週刊ポスト
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
ホワイトのロングドレスで初めて明治神宮を参拝された(4月、東京・渋谷区。写真/JMPA)
宮内庁インスタグラムがもたらす愛子さまと悠仁さまの“分断” 「いいね」の数が人気投票化、女性天皇を巡る議論に影響も
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン