2度目となる新型コロナ緊急事態宣言の期限まで2週間を切った。日々の新規感染者数や重症者数の増減ばかりが我慢を続ける国民のモチベーションになっているが、対策の指揮をとる政府や各自治体トップの指針やメッセージはどうも伝わってこない。自粛疲れもピークに達するいま、どんなメッセージを発すれば多くの国民に浸透するのか──。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が、ある事例をもとに考察する。
* * *
世界中で新型コロナの感染が急拡大し、その脅威が増している。日本では緊急事態宣言が再発令となり、飲食店に対する営業時間短縮の要請、外出自粛の要請、テレワークの推進などが行われている。
日本で最初の新型コロナ感染者が確認されたのは、昨年の1月15日。それから1年の間に3つの波が襲来し、さまざまな感染拡大防止策がとられてきた。
首都圏1都3県では、4月7日から5月25日まで1回目の緊急事態宣言が出され、企業がテレワークを推進したり、学校が休校になったり、各種イベントが中止となったりして外出自粛が進んだ。そして、5月に入ると感染の波はいったん落ち着いた。
ところが、今回の再発令では、前回のときほど外出自粛が進んでいないと報じられている。これまでの拡大防止策を振り返りながら、その理由について考えてみよう。
キーワードでのスローガンが浸透しなくなった?
感染拡大防止策では、取り組むべきポイントがキーワードで提示されることが多い。
代表的なものは、密閉空間、密集場所、密接場面のいわゆる「3密」回避だろう。この言葉は、昨年3月に小池百合子・東京都知事が記者会見でボードを使って呼びかけたことで、知名度が上がった。2020年の「新語・流行語大賞」の年間大賞を受賞するほど浸透した。
ただ、キーワードによるスローガンが常に浸透するとは限らない。11月には、小池都知事の記者会見で、会食時に「5つの小(こ)」を徹底するよう呼びかけられた。これは、小人数で、小一時間程度におさめ、小声で楽しみ、小皿に料理をとりわけ、小まめにマスク・換気・消毒をする──というものだ。この5つの小をスラスラ言える人は、かなり感染防止の意識が高いといえるだろう。