淡々とポイントを伝えるだけでは国民に響かない

 では、どんなメッセージの出し方が有効なのか。

 もはやインパクトのあるキーワードや「勝負」を連発しても、なかなか浸透しなくなっている一方、耳障りのよい楽観的な話ばかりでも、疑いの目でみられて素直に受け入れられない。そうかといって、淡々と取り組むべきポイントを伝えるだけでは、聞き手にはほとんど響かない。

メッセージがまったく伝わらないと批判を受ける菅首相(時事通信フォト)

メッセージがまったく伝わらないと批判を受ける菅首相(時事通信フォト)

 そこで、ストックデールの逆説を踏まえると、

●最後には必ずコロナ禍を克服できるということを、まず熱意を込めてしっかりと伝える。
●一方、現下の厳しい状況を直視して、これまでの事実関係や今後の現実的な見通しを示し、そのうえでこれから皆で一丸となって取り組む具体的な内容を訴える。

 といった、強いメッセージが今まで以上に重要になってくるだろう。

ワクチン接種の調整を担う河野大臣のメッセージが今後重要になる(時事通信フォト)

ワクチン接種の調整を担う河野大臣のメッセージが今後重要になる(時事通信フォト)

 例えば、ワクチン接種について言えば、まず、ワクチンによってコロナ禍は必ず乗り越えられることを伝える。そして、ワクチン候補の審査・承認、接種の優先順位付け、輸入や国内の物流、接種券の郵送や接種会場の準備などの現状を丁寧に説明する。

 そのうえで、「順番が一番最後の人でも〇月までには接種ができます。それまで感染拡大防止の取り組みをみんなで頑張って続けていきましょう」といったメッセージを訴えることが考えられる。

 ワクチン接種は2月下旬から始まる見通しだが、期待通りに接種が進んでも感染が収束に向かうとは限らない。まだしばらく、コロナ禍の紆余曲折が続くと考えたほうがよさそうだ。

 このため、コロナ対策を指揮する側としては、常に現実を見据えながら未来に希望が抱けるようなメッセージも発信し続け、人々の行動変容につなげていく努力が必要といえるだろう。

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