国際情報

バイデン政権は共和党とのケンカより中国と「正しい冷戦」を

バイデン氏はオバマ政権時には親中派と見られていた(AFP=時事)

バイデン氏はオバマ政権時には親中派と見られていた(AFP=時事)

 アメリカのバイデン政権にとって、パリ協定への復帰や同盟国との関係改善はそれほど難しくはないだろう。4年前までのアメリカに復帰すればいいからだ。しかし、中国との関係は違う。トランプ政権の4年間で、アメリカ人の対中国感情はかつてなく悪化した。そして、それは間違ってはいない。それ以前のアメリカが、経済的な結びつきを重視して目をつぶってきた中国の問題にアメリカ国民が気づいたことは、中国という国を世界秩序のメンバーとして受け入れるために必要な変化だった。だからこそ、バイデン政権は、そうやすやすとは中国と「和解」するわけにはいかない。日本にも深く関わる新しい米中関係について、ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏がリポートする。

 * * *
 ニューヨーク・タイムズのコラムニストであるニコライ・クリストフ氏は、アメリカ・ジャーナリズムの最高の栄誉であるピューリッツァー賞を2回受賞している一流のジャーナリストである。ただし、日本にとっては目の上のタンコブのような存在でもある。徹底して尖閣諸島は中国の領有権を認めるべきだと主張しており、日本政府は同氏とニューヨーク・タイムズに抗議を繰り返してきた。

 ただし、クリストフ氏は必ずしも中国贔屓というわけではない。習近平・国家主席による独裁体制や、共産党による一党支配については批判的で、しかし中国とアメリカが対立することは世界にとって百害あって一利なしであるというのが氏の主張の骨子だ。

 そのクリストフ氏は最新のコラムで、米中関係は難しい局面を迎えているが、米中戦争が起きる可能性はほとんどないだろうと予測している。日本人にとっては様々な捉え方がある話だとしても、このコラムの示唆することは重要だと思う。同氏は、米中戦争は起きないけれど、中台の小規模な軍事衝突は起き得ると語る(〈〉内は著者抄訳。以下同)。

〈それは、アメリカ人がほとんど聞いたことのない小さな島で始まるかもしれない。台湾によって実効支配されているが、習近平が台湾に圧力をかけるために侵略を試みる可能性はある。あるいは、台湾と世界をつなぐインターネットの海底ケーブルを切断するために潜水艦を送り込むかもしれない。台湾の石油供給ラインを封鎖するとか、金融システムにサイバー攻撃を仕掛ける可能性もある。いずれも可能性は低いとはいえ、過去数十年では最もリスクが高まっているだろう。それはアメリカにとって、キューバ危機以来、他の核保有国との間で最も危険な対立になるだろう。〉

 そのうえでクリストフ氏は、バイデン政権にとって中国問題は非常に扱いにくいと予測する。それは、香港での抑圧的な政策や、ウイグル族に対する「大量虐殺」など人権問題に関して妥協できないからだ。それは多くの専門家が同意していることだし、筆者も同じように考える。民主党政権は概して人権問題に敏感であり、貿易不均衡に怒ったトランプ政権とは別の理由で、対中強硬姿勢を崩せなくなるだろう。

 クリストフ氏は、それは共和党にとって絶好の攻めどころになると指摘する。

〈バイデン政権のプリンケン国務長官は、同盟国との友好関係を再構築したうえで、それでもなおトランプ政権の中国に対する厳しいアプローチは継続すると表明した。それに対して共和党は、中国問題こそバイデン政権の脆弱性だと見なしており、「北京バイデン」とあざ笑う者もいれば、テッド・クルーズ上院議員は「チーム・バイデンが中国共産党を受け入れた」と非難している。〉

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
離婚のNHK林田理沙アナ(34) バッサリショートの“断髪”で見せた「再出発」への決意
NEWSポストセブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
かつて問題になったジュキヤのYouTube(同氏チャンネルより。現在は削除)
《チャンネル全削除》登録者250万人のYouTuber・ジュキヤ、女児へのわいせつ表現など「性暴力をコンテンツ化」にGoogle日本法人が行なっていた「事前警告」
NEWSポストセブン
水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜の罪で親類の女性が起訴された
「ペンをしっかり握って!」遺体に現金を引き出させようとして死体冒涜……親戚の女がブラジルメディアインタビューに「私はモンスターではない」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン