芸能

俳優・役所広司、新作『すばらしき世界』の演技は「役者としての集大成」

(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

 映画『すばらしき世界』が公開前から話題だ(2月11日全国公開。配給:ワーナー・ブラザース映画)。試写会に足を運んだファンからは、主演を務める俳優・役所広司(66)の演技に魅了されたという声も数多く寄せられている。40年以上のキャリアを誇り、数多くの映画賞を受賞してきた名優は、新作映画で一体どんな境地へと突き進んでいるのだろうか。同作のプロデューサーと、映画評論家の寺脇研氏に話を聞いた。

『すばらしき世界』は、『ゆれる』(2006)や『ディア・ドクター』(2009)、『夢売るふたり』(2012)、『永い言い訳』(2016)など数々の話題作を世に送り出してきた西川美和監督による5年ぶり6作目となる映画。これまでオリジナルの脚本を手がけてきた西川監督が初めて他者による小説を映画化した作品である。

 原案となったのは小説家・佐木隆三による1990年のノンフィクション・ノベル『身分帳』。刑務所暮らしを経て人生を再びやり直そうとした男が、社会との軋轢に葛藤する様を描いた物語だ。映画では舞台を現代社会へと移し、人生の大半を獄中で過ごした主人公・三上正夫を役所広司が熱演。殺人犯という過去を持つ、ダークだが人間味あふれる役柄を見事に演じ切った。

 本作で役所広司は、殺人犯という、世間一般から外れたアウトサイダーでありながら、日本の現代社会で暮らす一人の人間でもあるという、ある種の二面性を引き受けている。殺人犯に感情移入することはできないにしても、その人間らしい振る舞いに観客が自分自身の姿を垣間見ることはあるはずだ。『すばらしき世界』でプロデューサーを務めた西川朝子氏は、そんな主人公のリアリティに触れながら次のように述べる。

「『すばらしき世界』をご覧いただくと、主人公・三上という男について『こういう人っているなぁ』と思わずにいられなくなり、やがて彼に訪れる日常些細なできごとにハラハラしたり、笑ったり、一方で胸をかきむしられるような思いになったりするはずです。

 役所広司さんの演技は、スクリーンに映し出されている作り物としてではなく、“そこに居る人”の人生のように私たちの目の前に立ち上がってくるのです。

 本作で西川美和監督が描いたのは人生の大半を刑務所で過ごした後、今度こそやり直すと決意したひとの物語。三上の抱える、普通の暮らしを送りたいという切実な思いは、今の世の中、誰にも共通した願いのように思います。観終わった後、『すばらしき世界』というタイトルを思わず口にしたくなる映画になっていると思いますので、ぜひ映画をご覧になって、このタイトルの意味を感じてください」

(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

(C)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン