そう。そもそもアイドルとは単体では存在しえない媒体であり、あらゆる力が物理学上そうであるように、その作用は双方向性だ。
「つまり誰かが誰かを推し、仮託し、生じるものがアイドルなんでしょう。ある種、神聖で禍々しい祭祀のような熱さのエネルギーを描きたかった。コロナ禍で世界も日本も疲弊しています。誰もがマスクして家呑みでね。現状では致し方がない。けれど、せめて物語の世界では思いっきり熱いエネルギーを感じてほしい。そんな祈りも込めて書きました」
もう一つの世界。それはいつの世も現実を生き抜くために存在してきたのだ。
【プロフィール】
中森明夫(なかもり・あきお)/1960年三重県生まれ。15歳で上京し、高校を中退。1980年代よりコラムニストやアイドル評論家として各メディアで活躍し、新人類の旗手、「オタク」の名付け親としても知られた。主な著書・共著に『東京トンガリキッズ』『オシャレ泥棒』『Mの世代 ぼくらとミヤザキ君』『アイドルにっぽん』『午前32時の能年玲奈』『青い秋』等。また2010年には初純文学作品『アナーキー・イン・ザ・JP』を発表し、三島由紀夫賞候補に。独身、A型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2021年2月19日号