ビジネス

コロナ禍で移動が難しい今こそ新発想と技術で「儲かる農業」へ

大前研一氏が考える「儲かる農業」とは(イラスト/井川泰年)

大前研一氏が考える「儲かる農業」とは(イラスト/井川泰年)

 働き方改革が、新型コロナウイルスの感染拡大によって強制的に進みつつある。オフィスへ出勤できなくなった人だけでなく、飲食業低迷の影響を大きく受けている農業も、産業として体質の変化を求められている。経営コンサルタントの大前研一氏が「儲かる農業」へのシフトについて解説する。

 * * *
 新型コロナウイルス禍で「働き方」が大きく変わりつつある。場所に縛られず、地方に移住してオンラインで仕事する人も増えている。

 その一方で、日本の農業は構造的な衰退に歯止めがかからない。農林水産省の統計によると、2020年の農家戸数は174万7000戸で、5年前に比べて40万8000戸減少し、基幹的農業従事者(※自営農業に主として従事した世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者)は136万1000人で、同39万6000人減った。基幹的農業従事者のうち65歳以上が占める割合は69.8%で、5年前に比べて4.9ポイント上昇。要は農家が大幅に減り、農業従事者の高齢化も年々進んでいるのだ。

 そういう日本の農業がこれから取り組むべきは「儲かる農業」へのシフトだろう。すでにロボットやICT(情報通信技術)、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの先端技術を活用した「スマート農業」を導入し、省力化や生産物の品質向上を図っている農家も珍しくないが、なお改善の余地はある。

 私は食いしん坊なので、「食」と「食材」に対する関心は非常に高い。以前はネットスーパー「エブリデイ・ドット・コム」を経営して、新鮮でリーズナブルな農産物や水産物の仕入れに腐心していたし、今は熱海のリゾート温泉旅館「せかいえ」の経営者としてレストランで提供する美味しい食材の調達などを研究している。また、趣味のスノーモービルやオートバイで長野県をしばしば訪問し、その縁で何人もの生産者と知り合い、交流している。

 そうした知己の中でも、飯山市の農家が鍋倉山の麓(なべくら高原)で作っている大根が絶品なので、大手スーパーの経営者に直取引してもらえないかと打診した。なぜなら、その生産者は「年間10万本抜いているので、1本100円もらえれば十分満足」と言うのだが、農業協同組合(JA)に出すと他の生産者の大根と一緒くたになった上に流通業者を経てスーパーや八百屋の店頭に並んだ時は1本400円前後になってしまうからである。つまり、生産者と消費者の間に介在している農協や問屋などが小売価格の75%ものマージンを抜いているわけだ。

 長野県で言えば、飯山市のアスパラガスは太くてジューシーで最高だ。これも品質にうるさいレストランなどは農家から直接取り寄せている。北志賀高原の西斜面で作ったリンゴは12月中旬にもぎ取ると、蜜入りで実に旨い。それらの価値がわかる消費者が農家から直接購入するようになり、市場にはほとんど出回らない。

 このように特徴のある農産物はブランド化して「D to C(Direct to Consumer)」に近い仕組みを大々的に導入すれば、農家は今までよりもはるかに儲かるし、消費者は新鮮で美味しい食材を安く手に入れることができるようになる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【ハワイ別荘・泥沼訴訟に新展開】「大谷翔平があんたを訴えるぞ!と脅しを…」原告女性が「代理人・バレロ氏の横暴」を主張、「真美子さんと愛娘の存在」で変化か
NEWSポストセブン
小林夢果、川崎春花、阿部未悠
トリプルボギー不倫騒動のシード権争いに明暗 シーズン終盤で阿部未悠のみが圏内、川崎春花と小林夢果に残された希望は“一発逆転優勝”
週刊ポスト
「第72回日本伝統工芸展京都展」を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月10日、撮影/JMPA)
《京都ではんなりファッション》佳子さま、シンプルなアイボリーのセットアップに華やかさをプラス 和柄のスカーフは室町時代から続く京都の老舗ブランド
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の公判が神戸地裁で開かれた(右・時事通信)
「弟の死体で引きつけて…」祖母・母・弟をクロスボウで撃ち殺した野津英滉被告(28)、母親の遺体をリビングに引きずった「残忍すぎる理由」【公判詳報】
NEWSポストセブン
焼酎とウイスキーはロックかストレートのみで飲むスタイル
《松本の不動産王として悠々自適》「銃弾5発を浴びて生還」テコンドー協会“最強のボス”金原昇氏が語る壮絶半生と知られざる教育者の素顔
NEWSポストセブン
沖縄県那覇市の「未成年バー」で
《震える手に泳ぐ視線…未成年衝撃画像》ゾンビタバコ、大麻、コカインが蔓延する「未成年バー」の実態とは 少年は「あれはヤバい。吸ったら終わり」と証言
NEWSポストセブン
米ルイジアナ州で12歳の少年がワニに襲われ死亡した事件が起きた(Facebook /ワニの写真はサンプルです)
《米・12歳少年がワニに襲われ死亡》発見時に「ワニが少年を隠そうとしていた」…背景には4児ママによる“悪辣な虐待”「生後3か月に暴行して脳に損傷」「新生児からコカイン反応」
NEWSポストセブン
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《黒縁メガネで笑顔を浮かべ…“ラブホ通い詰め動画”が存在》前橋市長の「釈明会見」に止まぬ困惑と批判の声、市関係者は「動画を見た人は彼女の説明に違和感を持っている」
NEWSポストセブン
バイプレーヤーとして存在感を増している俳優・黒田大輔さん
《⼥⼦レスラー役の⼥優さんを泣かせてしまった…》バイプレーヤー・黒田大輔に出演依頼が絶えない理由、明かした俳優人生で「一番悩んだ役」
NEWSポストセブン
国民スポーツ大会の総合閉会式に出席された佳子さま(10月8日撮影、共同通信社)
《“クッキリ服”に心配の声》佳子さまの“際立ちファッション”をモード誌スタイリストが解説「由緒あるブランドをフレッシュに着こなして」
NEWSポストセブン
“1日で100人と関係を持つ”動画で物議を醸したイギリス出身の女性インフルエンサー、リリー・フィリップス(インスタグラムより)
《“1日で100人と関係を持つ”で物議》イギリス・金髪ロングの美人インフルエンサー(24)を襲った危険なトラブル 父親は「育て方を間違えたんじゃ…」と後悔
NEWSポストセブン
自宅への家宅捜索が報じられた米倉(時事通信)
米倉涼子“ガサ入れ報道”の背景に「麻薬取締部の長く続く捜査」 社会部記者は「米倉さんはマトリからの調べに誠実に対応している」