コロナ後遺症の事例
日本呼吸器学会理事長の横山彰仁医師は、こうしたせん妄の症状が出る理由について「コロナ特有のものではないと考えられます」と説明する。
「せん妄は、高齢者が入院するとかなりの割合で発症する意識障害です。環境が大きく変化することで、精神に変調をきたすことがある。
そういう意味では、コロナが重症化した高齢者には、一般的な入院で生じるのと同じ弊害が発生するリスクがあります。ウイルスが脳細胞に感染し、認知症を起こす可能性も報告されているが骨折などで入院して寝たきりが数週間続き、そこから認知症が始まるという事例は少なくないので、コロナ入院がきっかけとなる可能性も否定はできない」
こうした長期的な懸念が現実になるかは、流行が始まってまだ1年の段階でははっきりしない。後遺症の原因や治療法の研究も始まったばかりである。コロナとの直接の因果関係によるものか、入院生活や経済的困窮など二次的な要因なのか、あるいはコロナ以前からの問題が顕在化したのか──コロナ治療や予防とともに解明が待たれる。
※週刊ポスト2021年2月19日号