東京五輪組織委だった森喜朗氏(時事通信フォト)
スポンサー各紙が開催中止への言及を避けるのは「営業面の期待からだろう」と指摘するのが元博報堂社員で作家の本間龍氏だ。
「五輪が開催されれば、スポンサーの各紙はマスコットや『がんばれ!ニッポン!』などのマーク類の使用権、オリンピック関連の映像や写真、日本代表選手団の関連素材など幅広い使用権が認められています」
さらに「広告費」の面でも大きなメリットがある。本間氏が続ける。
「経営が苦しい新聞社としては、スポンサーになることで近年の広告不況をカバーしたい、という切実な願いがあったはずです。新聞への広告出稿は減る一方で、15年前の半分以下になっています。
五輪スポンサー企業は『ナショナルクライアント』と呼ばれる大企業ばかりです。五輪が開催されれば『見開きカラーで数千万円』といった広告が一斉に入るでしょう。各社で広告単価が違うため一概には言えませんが、最低でも3~4割増、それぞれ数十億円単位の売り上げ増が見込める。また挟み込みで五輪特集だけの別刷りも制作されるはずで、ここにも五輪キャンペーン広告が多数入るでしょう。大手紙が“初期投資”として組織委に10数億円出資する価値は十分にある」
東京都オリ・パラ準備局がまとめた経済波及効果の試算結果(2017年)によると、大会開催による需要増加額は、スポンサー企業のマーケティング活動費だけで366億円とされている。
各紙にとっては世論が森批判に集中し、中止議論が下火になる――それが理想的なシナリオだったのでは。
※週刊ポスト2021年2月26日・3月5日号