秋本前局長は更迭されたが、後任は山田広報官の夫に(時事)
今回、総務省は問題発覚から11人の処分を決めるまで、わずか3週間程度だった。省内調査には数か月かかるのが通例で、新しいところでは農水省の鶏卵汚職では2か月を要したし、財務省の森友学園文書改竄問題では3か月かかった。もちろん、これは総務省が他省より深く反省したからではない。「官邸と総務省主流派は、今回の問題を週刊文春にリークしたのは内部の人間だと疑っていた。だから、問題が発覚してすぐに、接待を受けた幹部や東北新社関係者の聴取、領収証の確認、さらにメールのやりとりまで調べる特捜部並みの調査をした。文春が書いた内容を知り得たのは誰かを炙り出そうとしたのだろう」(全国紙社会部記者)というわけだ。
処分を発表したのちに、武田良太・総務相は副大臣をトップとする「検証委員会」を立ち上げると発表した。どうやらまだ犯人捜しは続いているようだ。「検証」するのが不浄官僚の行いでないことは、同省の人事を見れば明らかだ。接待を受けて更迭された秋本芳徳・情報流通行政局長の後任には、山田広報官の夫である吉田博史・官房総括審議官を充てた。吉田氏も同局の地上波課長などを歴任した放送マフィアの一角だが、異例なのは、当分の間、官房総括審議官を兼務したまま局長を務めるとされたことだ。調査をする内閣官房の幹部と調査される局長が同一人物なのだから、こんな茶番はない。放送マフィアを菅派で握り続け、一方で裏切り者を何がなんでも捜し出して報復しようということだろう。まさにマフィアさながらのやり方だ。
大手マスコミさえ押さえておけば何でもできると驕った政官業報の密室行政は、週刊誌の記事一本でもろくも崩れた。「女は長話せずに、わきまえていろ」が信条の某元首相は表舞台を去ったが、国の大事をすべて密室で決め、「上級国民」で利権を分け合えばいいという昭和の発想は、もはや通用しないことを菅首相はまだわかっていないようだ。
■武冨薫(ジャーナリスト)