国内

ステーキ汚職の総務省が「リーク犯捜し」に血眼になっている

7万円のごうそうも覚えていないくらい接待が常態化していたのか(山田広報官=時事)

7万円のごちそうも覚えていないくらい接待が常態化していたのか(山田広報官=時事)

 7万円の和牛ステーキと海鮮料理をおごってもらったことを「記憶にない」ととぼけていた山田真貴子・内閣広報官。こんな人物が総理会見の仕切り役であり、それを菅義偉・首相は続投させるというのだから、もうこの内閣の発表は何もかも信用できなくなる。

 そもそも山田氏の広報官としての強権ぶりは官邸記者たちにすこぶる評判が悪かった。会見に参加する記者たちから事前に事細かに質問内容を聞き出し、それをもとに官僚が「答弁書」を作り、菅首相はお得意のペーパー読み回答をするだけだった。こんなものは記者会見とは呼ばない。中国か北朝鮮の国営メディアのインタビューと同じである。その会見で山田氏は、政権の意に沿わない質問をする記者は徹底的に無視して、いくら手を挙げても指さない。首相の答えに納得せずに食い下がる記者を制止し、最後は「このあと日程があります」と、質問の途中でも強引に会見を打ち切って首相を逃がすガードマンの役割だった。

 そもそも首相会見は記者クラブが主催しているものだ。山田氏に司会をさせて、その傍若無人を許している記者クラブのほうこそ情けないのだが、それでも山田氏に逆らえない理由が大手マスコミにはある。それこそ、今回の菅正剛氏(菅首相の長男)による高額接待の舞台となった総務省「情報流通行政局」の存在である。

 この部署は2008年に新設された新しいセクションで、その生みの親こそ、第一次安倍内閣で総務大臣を務めた菅氏だった。ここにNHKから民放、衛星放送まですべての許認可を集中させ、系列の新聞社を含めて大手マスコミに睨みを利かせる“放送マフィア”の役割を担わせた(ちなみに電波の割り当てを行う総合通信基盤局は「電波マフィア」と呼ばれる)。安倍内閣、菅内閣を通じて政権がマスコミに高圧的に接し、会見は適当、NHK人事にまで介入したと疑いをかけられてきたのは、この放送マフィアの存在ゆえだ。総務省のドンである菅氏は、この局にお気に入りの菅派官僚を集め、マスコミ支配の道具にしてきた。山田氏も総務省時代に同局の局長を務めたマフィアのボスである。

菅首相はそれでも山田広報官の続投にこだわった(時事)

菅首相はそれでも山田広報官の続投にこだわった(時事)

 今回の事件には、菅氏のネポティズム(縁故主義)が色濃く出ている。献金を受けている後援者が設立した企業に息子が就職し、その息子の前職は菅氏の総務大臣時代の秘書官であり、その際に知己を得た菅派官僚たちを接待した。そして菅派官僚は、息子の会社の事業に認可を与えていた。まさに菅派による菅派のための所業である。ここまで行政を恣意的に動かすと、当然、総務省内にもそれをおもしろくないと思う反・菅派のグループもできる。菅氏は総裁選の勝利が確実になると、官僚の人事について「反対するのであれば異動してもらう」とすごんで見せたが、事実、これまで菅氏はそうやって官僚を恐怖で支配してきた。

 総務大臣時代に菅氏が推進した「ふるさと納税」に反対したことで「菅に飛ばされた」と言われているのが、次官候補と言われながら自治大学校長に異動させられた経験を持つ平嶋彰英・立教大特任教授である。同氏は昨年9月、菅内閣の発足にあたって朝日新聞のインタビューに答えて、こう語っていた。

「こうした『異例人事』は私だけではありません。だから、いまの霞が関はすっかり萎縮しています。官邸が進めようとする政策の問題点を指摘すれば、『官邸からにらまれる』『人事で飛ばされる』と多くの役人は恐怖を感じている。どの省庁も、政策の問題点や課題を官邸に上げようとしなくなっています。(中略)菅さんは、自分に徹頭徹尾従った人には人一倍の恩義を感じ、恩義に報いようとする。逆にもし抵抗すれば、干すという方だと思います。これでは公正であるべき人事がネポティズム(縁故主義)になりかねません」

関連キーワード

関連記事

トピックス

麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
「同棲していたのは小柄な彼女」大麻所持容疑の清水尋也容疑者“家賃15万円自宅アパート”緊迫のガサ当日「『ブーッ!』早朝、大きなクラクションが鳴った」《大家が証言》
NEWSポストセブン
当時の水原とのスタバでの交流について語ったボウヤー
「大谷翔平の名前で日本酒を売りたいんだ、どうかな」26億円を詐取した違法胴元・ボウヤーが明かす、当時の水原一平に迫っていた“大谷マネーへの触手”
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
《同居女性も容疑を認める》清水尋也容疑者(26)Hip-hopに支えられた「私生活」、関係者が語る“仕事と切り離したプライベートの顔”【大麻所持の疑いで逮捕】
NEWSポストセブン
麻薬取締法違反で逮捕された俳優の清水尋也容疑者(26)
【大麻のルールをプレゼンしていた】俳優・清水尋也容疑者が“3か月間の米ロス留学”で発表した“マリファナの法律”「本人はどこの国へ行ってもダメ」《麻薬取締法違反で逮捕》
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン