芸能

『みんなのうた』60年貫いたオンエア曲の基準「無名でも良い作品」

みんなのうたは60周年

『みんなのうた』は60周年

 何十年も聴いていない曲だったとしても、ふとそのメロディーを聴くと、あの頃の記憶がまざまざとよみがえってくることがある。お母さんがキッチンで口ずさんでいた曲、お父さんと寝る前に一緒に歌った曲、友達が教えてくれた曲──記憶の彼方に眠っているその曲は、『みんなのうた』(NHK)のものかもしれない。

 1953年にテレビの本放送が始まってから8年後、『みんなのうた』が産声をあげた。同番組を研究する、鹿児島女子短期大学児童教育学科専任講師の佐藤慶治さんが語る。

「戦後、GHQの規制で戦意高揚や団結目的の歌が禁止され、学校教育の場で歌える歌が少なくなっていた。特に小学校の高学年から中学生が歌える歌が全然ないということで、1961年にNHKが始めたのが『みんなのうた』です。

 放送開始後、ポピュラーソングも取り入れた歌や映像の新鮮さが子供や学校の先生に受けて大流行。開始数年で学校現場に浸透したようです。歌と映像が一緒になっていることも、当時としては大変画期的でした」

 実際にオンエアされる楽曲はどう決まるのだろうか。

「『みんなのうた』は放送局が作る歌そのものが番組です。これは世界でもめずらしいスタイルです」

 こう語るのは、『「みんなのうた」が生まれるとき』(SB新書)を著書に持ち、1998年から延べ12年にわたって番組プロデューサーを務めた川崎龍彦さんだ。

「NHKが作詞家・作曲家に委嘱して曲を作り、歌手や映像作家を決めて制作するのが基本的なスタンスです。まったくの白紙から担当者が企画を立てるケースと、外部の作家やプロダクション、レコード会社などから企画の骨子が持ち込まれ、番組として実現したいものだと判断したら、一緒に作るケースがあります。

 たとえるなら、楽曲作りは、真っ白なキャンバスに何度も何度も納得するまで色を重ねていく作業です。作り手にとって、決して楽な道ではありません」(川崎さん)

 注目すべきは、芸能プロダクションなどの意向を反映した「バーター」や「タイアップ」が見られないことだ。

「持ち込まれた企画はブラッシュアップして実現するケースが多いですが、大事にしていたのは既成の価値観にとらわれないことです。どれだけ有名な作家でも番組のコンセプトに合わなければ断り、逆に無名の作家でも、いい作品だと思えたらなるべく採用しました」(川崎さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
日本初となる薬局で買える大正製薬の内臓脂肪減少薬「アライ」
日本上陸の内臓脂肪減少薬「アライ」 脂肪分解酵素の働きを抑制、摂取した脂肪の約25%が体内に吸収されず、代わりに体内の脂肪を消費
週刊ポスト
専修大サッカー部を辞任していた源平監督(アフロスポーツ)
《「障害者かと思った」と暴言か》専修大サッカー部監督がパワハラ・経理不正疑惑で辞任していた 大学は「警察に相談している」と回答
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
日本人パートナーがフランスの有名雑誌『Le Point』で悲痛な告白(写真/アフロ)
【300億円の財産はどうなるのか】アラン・ドロンのお家騒動「子供たちが日本人パートナーを告発」「子供たちは“仲間割れ”」のカオス状態 仏国民は高い関心
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
日本製鉄によるUSスチールの買収計画
【日本製鉄のUSスチール買収問題】バイデンもトランプも否定的だが「選挙中の発言に一喜一憂すべきではない」元経産官僚が読み解く
NEWSポストセブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン