発見が遅れれば、手術も抗がん剤も手遅れになりかねない。一石教授がまず注意を促すのは、胃がんだ。
「I期の5年生存率が100%近く、早期に発見すれば根治も可能ですが、自覚症状がなく気づかない人が多い。
早期発見には内視鏡検査が重要ですが、検査時にゲホゲホと飛沫が散り、医師と看護師と受診者が密になるため、コロナ禍では避けられがちです。しかし胃がんはステージが1つ上がると2~3割も死亡率が上がるので、検診で早期に見つけることが大切です」(一石教授)
日本人男性死亡数3位の大腸がんも胃がんと同様、内視鏡検査が忌避される傾向がある。
例えば神戸大病院では昨年4~5月の胃カメラ、大腸カメラの検査件数が前年同期比で約3割減少したと報じられた。
「カナダ・クイーンズ大が約130万人を対象にした最新の研究では、大腸がんの治療が1か月遅れると患者の死亡リスクが13%増えました。大腸がんも早期では自覚症状が少なく、定期的な検診が必須です」(一石教授)
コロナによる検診控えは、世界的な問題になりつつある。
「指摘されているのが、『がん見逃しによる死』がコロナ死を上回る可能性です。特にこれまでコロナ死が8000人と欧米に比べて少ない日本は、がんの見逃し死がそれを上回る事態が懸念されます」(一石教授)
小西氏もこう指摘する。
「4万人という数字に『不安を煽るな』と批判する人もいるが、現場の医師は隠れがん患者の急増に危機感を抱いている。4万人という数字を出すことで一般の人々が検診を受けるようになれば、がんの重症化を防げる。
4月以降は感染症対策を講じながら、コロナ以前と同様に多くの医療機関でがん検診が実施される予定です。がんを悪化させないためにも、緊急事態宣言が明けたら、がん検診を受けてほしい」