たしかに「只野仁」がマスクで格闘するシーンはサマにならないかも(共同)
コロナ禍を前提にすると世界観がおかしなことになってしまうジャンルもあります。ヤクザもので、ヤクザがみんなマスクをしていたら世界観ぶち壊しですよ。マスクしたヤクザが「ぶっ殺すぞ、こら!」とすごんでも格好つかない。ラブロマンス作品で、マスクをしても成立する世界観を作るのも簡単ではないでしょうね。
コロナによって注目された作品としては、『アウトブレイク』(1995年公開)や『コンテイジョン』(2011年公開)など、ウイルスのパンデミックをテーマにした映画がありました。フィクションではパンデミックがどう描かれていたか気になるのは当然でしょうが、こうした作品では、たいていウイルスは「感染したら致死率100%」という設定になっています。極端な設定だからこそエンターテインメントになるわけです。しかし、いまや実際にパンデミックを経験した私たちから見ると、「これはちょっと極端すぎる」「現実はそんなんじゃないよ」と感じることもあります。もしかすると、こういう映画はむしろ作るのが難しくなるかもしれません。
いずれにしても、コロナが影響しているのはドラマの内容より制作現場です。コロナ対策をしながら撮影することはとても大変で、これまで一日に5シーン撮れていたものが4シーンしか撮れないなんてことはよくあるようです。予算が豊富なテレビドラマなら、しっかり対策しながら進めることもできるでしょうが、低予算映画などはすごく苦労しています。僕も昨年、そういう作品をひとつ予定していたのですが、1年延期せざるを得ませんでした。