芸能

『感染列島』瀬々監督 3本の新作でコロナ禍を反映させなかった理由

瀬々敬久監督はなぜ新作にコロナ禍を反映させなかったか?(写真/AFP=時事)

瀬々敬久監督はなぜ新作にコロナ禍を反映させなかったか?(写真/AFP=時事)

 登場人物がマスクを着け、ソーシャルディスタンスを守り、飲食店は20時で閉店する──創作に携わる者はリアルな世界を描くべきか、はたまた創作は自由であるべきか。コロナ禍の新たな表現様式について『感染列島』『64』などを手掛けた映画監督・瀬々敬久氏が語った。

 * * *
 昨年は大変な状況下でしたが、ありがたいことに3本の映画を撮影させてもらえて、年間100日は現場に出ていました。3本とも現代や現代に続く時代設定の作品でしたが、いずれも「テーマ性」がぶれてしまうと感じたので、コロナ禍は反映させていません。

 佐藤健さんと阿部寛さんがW主演の『護られなかった者たちへ』(2021年秋頃公開予定)では、日本の格差社会や貧困問題という重いテーマを描いています。そこにコロナという目の前の問題が加わると、どうしてもマスク姿の出演者やソーシャルディスタンスといった要素に注目が行ってしまって本質が薄らいでしまう。

 ほかの2作品のテーマは「家族」でしたがこれも同様です。コロナ禍を舞台にしたくなかったので、どちらも発生以前の設定にしています。

 アジアで大流行したSARSのようなウイルスが蔓延した世界を描いた『感染列島』という映画を2009年に発表しました。当時からウイルスが人類の脅威となることは言われていましたが、まさか現実世界でこんなことが起こるとは想像していませんでした。

 しかし、いま映画と似た状況が起きているのは事実です。マスクをするのが当たり前になった世の中でそれを反映させずに撮影していると、どこか現実とかけ離れたSF映画を撮っているような気持ち悪さも感じました。

 長瀬智也さん主演のドラマ『俺の家の話』(TBS系)にしろ、コロナ禍と向き合って作品に取り入れている人たちは偉いなと思います。でも映画の世界は多様であるべきです。コロナ禍は描いても描かなくてもどちらでもいいが、一方に偏るようなことだけはあってはいけないと考えています。

 私もいつかはコロナ禍の日常を描きたいと思っていますが、もっとこういう状況をテーマとして見据えられた時に作りたいと思います。

※週刊ポスト2021年3月19・26日号

関連記事

トピックス

イギリス出身のボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
《ビザ取り消し騒動も》イギリス出身の金髪美女インフルエンサー(26)が次に狙うオーストラリアでの“最もクレイジーな乱倫パーティー”
NEWSポストセブン
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
「その日一日負けが込んでも、最後の一局は必ず勝て」将棋の世界で50年生きた“中年の星”青野照市九段が語る「負け続けない人の思考法」
NEWSポストセブン
東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
「鳥型サブレー大図鑑」というWebサイトで発信を続ける高橋和也さん
【集めた数は3468種類】全国から「鳥型のサブレー」だけを集める男性が明かした収集のきっかけとなった“一枚”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン