エクオール検査「ソイチェック」。尿検査によって体内における女性ホルモンと似た動きをする「エクオール」を作れるかどうか、確認できる(ヘルスケアシステムズ/4180円)
社員の6割を女性が占めるという同社では「エクオール検査」のほかにも女性のためのさまざまな病気や不調を防ぐための福利厚生があり、乳がんエコー検査や子宮頸がん検査も無料で実施している。さらに2018年度からは「かくれ貧血」などの不定愁訴を知るための血清フェリチン検査も開始された。
スマホの画面で検査結果を確認する八巻さんの隣の机で男性社員が熱心に読んでいるのは「女性のハッピーワークBOOK」。2018年2月に全社員に配布されたもので、月経や妊娠、出産、更年期といった女性の体についての悩みの詳細や産休、育休などといった人事制度・手続きなどを一冊の本にまとめたものだ。
同社のように女性の体に配慮した福利厚生や制度の充実を推進する企業は多い。大手IT企業の「サイバーエージェント」は月に1度、女性特有の体調不良や妊活の際に取得できる「エフ休暇」を導入し、医療や美容機器メーカーの「タカラベルモント」は不妊治療で悩む社員のために「顧問助産師」を設置している。
これまで職場の健康管理といえば“メタボ健診”など男性の病気を見つけることが主眼となっていた。しかしいま、大きな転換期を迎えている。
生理に伴う日本の経済的損失は年間約6800億円
先に紹介した「エクオール検査」は「フェムテック」と呼ばれる最新技術の1つ。female(フィメール/女性)とtechnology(テクノロジー/技術)を掛け合わせた造語で、「女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスや製品」を指す。
「フェムテック」市場はここ数年で大きく注目され、2025年には世界で5兆円の市場規模になるとの試算もある。フェムテック製品のオンラインサイトを運営し、日本市場をリードしている「フェルマータ」でCOOを務める近藤佳奈さんが解説する。
「『フェムテック』の市場にある商品やサービスは、月経周期を把握するためのアプリから挿入の深さを調節して性交痛を和らげるグッズまで、そのカバー範囲は多岐にわたります」
フェルマータが展開するオンラインショップをのぞいてみると、生理中に「はくだけ」で過ごせる吸水ショーツに始まり、デリケートゾーン用のソープや生理周期に伴う女性ホルモンの分泌量に合わせて成分を変化させたフェイスパック、女性用バイブレーターまで、あらゆる製品が目に入る。
「これらに共通するのは、女性がセルフケアを大切にし、自分の体に目を向けて、いたわることができるものだということ。この風潮が社会に浸透すればもっと快適に過ごせるようになり、体の変調が原因で仕事や人生の目的を諦めることが減るのではないかと思います」(近藤さん)