テレビ利権を報じるテレビも利権みまれ(共同)
それだけに一般の記者にとっては目障りな存在のようで、時には衝突することもあるという。別のベテラン新聞記者の話だ。
「こんなことがあった。総務省から衛星放送の新規参入枠を広げるという方針が出た時、記者会見で社の上層部の意向を受けた“波取り記者”の一人が、規制緩和に否定的な質問をぶつけたことがある。さすがに国民の感覚とかけ離れていたので、クラブの幹事社の記者が『“書かない記者”は出て行ってくれ!』と制止した」
波取り記者が最も重要視するのが、総務省の人事情報と電波行政に力を持つ自民党議員の動向だという。新聞社やテレビ局が電波の認可や規制政策で有利な立場を得るには、どの役人が出世するかをいち早くつかんで食い込み、障害になりそうな政治家がいれば懐柔する必要があるからだ。そうした役人、政治家と社の幹部をつなぐのも彼らの重要な役目になっている。
かつて大蔵省(現・財務省)を「ノーパンしゃぶしゃぶ接待」漬けにした銀行のMOF担社員とやっていることは変わらない。ある波取り経験者がこう告白する。
「我々は交際費が使えるわけではないので、MOF担のような豪華な接待はできない。官僚と食事をしながら取材することがあっても、せいぜい居酒屋の個室程度です。ただ、一般の記者と同様、会社のハイヤーは使えるから、官僚が政治家と会合する際にハイヤーで送迎してどんな話だったか聞き出したり、電波行政について会社の考えを伝えたりはしました。肩書きは記者ですから、たとえ官僚と会食しても公務員倫理規程には抵触しない」
国民の負託を受ける「報道」を名乗って、その実、自社の私利私欲のために官僚接待に明け暮れるとは、東北新社やNTTより悪質だ。