オンライン授業に手応えを感じている大手学習塾のひとつが、大学受験の東進ハイスクールや中学受験の四谷大塚などを展開している「ナガセ」である。有名講師による授業を全国の生徒が受講するユニークなシステムで知られる同社は、早くからオンラインにも取り組んできており、それだけにノウハウの蓄積も大きい。
「昨年の一斉臨時休校で学習の遅れが心配されるなかで、ナガセとして支援できることはないかと考えて昨年4月中旬からスタートしたのが、四谷大塚オンライン小学校と東進オンライン中学校でした」と、同社の常務執行役員でもある市村秀二・広報部長は説明する。
苦手とする子が多い算数と数学の授業を、週に2回、「無料」で配信している。四谷大塚や東進での授業をそのまま配信するわけではない。こちらは受験を目指す子たちが対象なので、レベルはかなり高い。
しかしオンライン小学校と中学校は、休校で学習が遅れることを心配する子たちを対象としているので、内容は教科書レベルにとどめてある。もともとの授業とは違うので、新しくコンテンツづくりからの取り組みだった。
オンラインのコンテンツなので、好きなときに好きな場所でコンテンツを選んで学習できる。ただし、授業を流してお終いではない。毎授業ごとに確認テストがあり、それに合格しなければ先に進めないシステムになっていて、質も確保されている。
受講者数は、スタートして1週間ほどで小中で20万人を超え、現在は約27万人にまでなっているという。とはいえ、無料でやっていてメリットはあるのだろうか。その疑問に市村広報部長は、次のように答えた。
「無料のコースを体験してみて、有料の受験対策のコースへ移ってくることも期待しています。数字までは把握してはいませんが、そういうケースもでてきているようです。それに、いつまでも無料でやるわけではなく、支援という最初の目的から、もうしばらくは算数・数学は無料でやりますが、有料化も考えています」