芸能

橋田壽賀子さんが決めた「渡鬼」「おしん」で描きたかったこと

現在は週3回、個人トレーナーについてトレーニングを行ったり、独身時代からの友人とよく一緒に旅をする。ともに夫を見送り、気楽な立場だ(撮影/森浩司)

95歳で亡くなった橋田壽賀子さん(撮影/森浩司)

 脚本家の橋田壽賀子さんが4月4日、熱海市内の自宅で亡くなった。95歳だった。数ある代表作の中で特に知られるのが『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)と連続テレビ小説『おしん』(NHK)だ。橋田さんをこれまで何度も取材してきたコラムニストのペリー荻野さんが、橋田さんが両作品を通じて伝えたかったことについて綴る。

 * * *
 亡くなった橋田壽賀子さんは、一貫して「家族」を描き続けた。

 その代表作といえば、やはり30年続いた『渡る世間は鬼ばかり』だろう。サラリーマンを辞めて自宅で料理屋を開いた夫婦(藤岡琢也・泉ピン子、のちに宇津井健・山岡久乃)と五人の娘たちの物語。結婚し、子育てに忙しい娘、ラーメン屋で姑とぶつかりながら働く娘、離婚した娘、資格を持ってバリバリ仕事をする娘、さまざまな環境で暮らす家族の日々を描いた。

 番組のスタートは1990年。バブルに浮かれ、トレンディドラマ全盛の日本では異色にも見えた「ふつうの家族の物語」は、多くの支持を集め、「渡鬼」の愛称で国民的なシリーズに。五月(泉ピン子)が働く「幸楽」のラーメンが商品化されるなど、話題となった。

 私はドラマの現場取材を続け、橋田さんにも幾度かインタビューする機会があった。そこで印象的だったのは、橋田さんが「時代を書くこと」を心がけているという話だった。
 
 五月が初めて使う携帯電話に戸惑ったり、夫の勇(角野卓造)がおやじバンドを結成したりと、「あるある」と同世代の視聴者の共感を呼ぶ場面は数知れず。(おやじバンド主要メンバーの山本コータローは、小笠原に行く船の中で演奏する姿がステキだったからと、橋田さんがその場で出演スカウトしたという)時を経て、子が巣立ち「空きの巣症候群」で孤独になる長女、小姑たちに悩まされる次女、キャリアウーマンの三女、恋多き女の四女、ファザコンの五女。岡倉家の五人娘は、悩みながらも自分の道を見つけていく。あまり知られていないが、このドラマの大きなテーマは「自立」なのであった。

 もうひとつ意外とも思えるテーマで書かれたのが、1983年、朝ドラ『おしん』だ。東北の寒村から、いかだ船に載せられて奉公に出た少女おしんが、明治・大正・昭和と激動の時代を生き抜く。

 もともと『おしん』は、橋田さんが学生時代に疎開していた山形で、昔は女の子が最上川からいかだ船に乗って奉公に出たと聞いて、いつか書きたいと思ったのが始まりだった。貧困、いじめ、修行、大切な人との別れ。おしん(田中裕子)は夫と出会い、子を授かるが関東大震災ですべてを失う。さらに戦争で大事な家族まで…。

関連キーワード

関連記事

トピックス

米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
埼玉では歩かずに立ち止まることを義務づける条例まで施行されたエスカレーター…トラブルが起きやすい事情とは(時事通信フォト)
万博で再燃の「エスカレーター片側空け」問題から何を学ぶか
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
事業仕分けで蓮舫行政刷新担当大臣(当時)と親しげに会話する玉木氏(2010年10月撮影:小川裕夫)
《キョロ充からリア充へ?》玉木雄一郎代表、国民民主党躍進の背景に「なぜか目立つところにいる天性の才能」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン
米利休氏とじいちゃん(米利休氏が立ち上げたブランド「利休宝園」サイトより)
「続ければ続けるほど赤字」とわかっていても“1998年生まれ東大卒”が“じいちゃんの赤字米農家”を継いだワケ《深刻な後継者不足問題》
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
《目玉が入ったビンへの言葉がカギに》田村瑠奈の母・浩子被告、眼球見せられ「すごいね。」に有罪判決、裁判長が諭した“母親としての在り方”【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカから帰国後した白井秀征容疑(時事通信フォト)
「ガイコツが真っ黒こげで…こんな残虐なこと、人間じゃない」岡崎彩咲陽さんの遺体にあった“異常な形跡”と白井秀征容疑者が母親と交わした“不穏なメッセージ” 〈押し入れ開けた?〉【川崎ストーカー死体遺棄】
NEWSポストセブン
赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者からはおびただしい数の着信が_(本人SNS/親族提供)
《川崎ストーカー死体遺棄》「おばちゃん、ヒデが家の近くにいるから怖い。すぐに来て」20歳被害女性の親族が証言する白井秀征容疑者(27)の“あまりに執念深いストーカー行為”
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン