「世間的なイメージとしては、広瀬すずに“演技派”のイメージはあまりないように思います。しかし、是枝裕和や李相日、坂元裕二といった世評の高い監督や脚本家の映像作品のほか、野田秀樹の舞台作品にも出演しています。
特に是枝監督の広瀬の演技への評価は高く、NHK『あさイチ』に出演したときは彼女のことを『ひとりで立ってる子』『なにものにも寄りかからずに、誰かに媚びることもなく、おもねることもなく、自分の足でちゃんと立ってる』と評していました。
そんな『ひとりで立ってる子』の孤独と自律がない交ぜになったような佇まいを感じさせたものとして、個人的にはドラマ『anone』での抑えた演技が印象的です」(飲用てれび氏)
坂元裕二が脚本を務めた2018年放送のドラマ『anone』(日本テレビ系)で、広瀬はネットカフェで寝泊まりする主人公を演じていた。彼女にとっては10代最後の主演連続ドラマであり、同年には芸能界デビューのきっかけとなった『Seventeen』の専属モデルも卒業。転機となった1年でもあっただろう。
実力を十分に備えた広瀬すず。世間に“演技派”としてのイメージが定着するにはどのようなきっかけが必要なのだろうか。飲用てれび氏は次のように指摘する。
「彼女があまり“演技派”と見られないのは、“アイドル女優”というイメージが強いためかもしれません。海外で賞を獲った作品に出演するといったインパクトがあると世評も変わるのかもしれませんが、出演作品と年齢を積み重ねることで、自然と評価が追いついてくるようにも感じます」
11日からスタートする主演ドラマ『ネメシス』は、数多くの賞を受賞した2009年の映画『SR サイタマノラッパー』を手がけたことでも知られる入江悠が総監督を担当。映画ファンからも期待が寄せられている作品だ。広瀬すずが“演技派”と呼ばれるようになる日が来るのは、時間の問題なのかもしれない。
◆取材・文/細田成嗣(HEW)