“スマート化”に活路
今や、世界をリードするデジタル先進国となった中国。最近ではスマートシティにスマートファクトリー、スマート公共交通、スマート港湾、スマート炭鉱、ひいてはスマート養豚場までなんでも“スマート”になっている。ここでいうスマートとは、IoT(モノのインターネット)によって山盛りのセンサーを組み込んでデータを収集し、5Gなどの高速回線でそのデータを飛ばし、AI(人工知能)によって処理をするといった一連の流れを指す。
例えばスマート炭鉱では、5G通信によってダンプカーを遠隔操作。ハンドルを切り間違えれば転落死というリスキーな状況でも、安全に働けるようになった。「安全なだけじゃなくて、コスト削減にもつながります。昔と違って、今の中国でも危険な仕事につく労働者は高給取りですから」と、ファーウェイ・ジャパンのスタッフはその意義を説明する。
ソリューションビジネス単体での売上は開示されていないが、手応えは上々のようだ。ファーウェイ創業者の任正非(レン・ジェンフェイ)CEO(最高経営責任者)は2月9日、山西省太原市で開催された「スマート鉱山イノベーション実験室」の設立記念セレモニーに出席した際、ウェアラブルデバイスやソリューションビジネスで「大きな成功が見込める。スマートフォン事業に頼らなくてもファーウェイは生存できる」と発言している。
トランプ大統領が矢継ぎ早に制裁をかけても潰れなかったファーウェイ。スマホは正直厳しいが、別の食いぶちを探して埋め合わせる根性はさすがとしか言いようがない。バイデン政権下でも米中対立は続くが、早期決着はありえない。米中両政府の丁々発止のやりとりが続き、そのあおりをくう民間企業が根性で耐えるという展開が続きそうだ。
【高口康太】
ジャーナリスト。翻訳家。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国の政治、社会、文化など幅広い分野で取材を行う。独自の切り口から中国・新興国を論じるニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運営。著書に『現代中国経営者列伝』(星海社新書)など。