4月13日以来、新型コロナの新規感染者が連日1000人を超え、重症病床の使用率も90%超と医療崩壊の危機が迫っている大阪。3度目となる緊急事態宣言も現実味を帯びる中、大阪府民の怒りの矛先が向かうのは、吉村洋文・大阪府知事だ。
コロナ発生当初を振り返れば、吉村知事の手腕は高く評価されていた。
連日テレビカメラの前で取材に応じ、「最後に責任を取って判断するのが政治家の仕事」と明言して、コロナ対策に奮闘する。その姿が府民の支持を集め、昨年4月にはツイッターで「#吉村寝ろ」がトレンド入りした。
だが勢いは長く続かず、徐々にメッキが剥がれていった。発端となったのは、昨年8月4日の「イソジン緊急会見」だ。
「ウソのような本当の話をします」
緊急記者会見でそう見得を切った吉村知事は、「ポビドンヨード(イソジン)でうがいをするとコロナの陽性率が減少する」と訴えた。思わぬ特効薬の登場に府民は色めき立ったが、この研究は論文発表前のもので、その後、立ち消えになり現在に至るまで説明はされていない。
元読売新聞大阪本社記者でジャーナリストの大谷昭宏氏が指摘する。
「2度目の緊急事態宣言の解除要請も同じですが、吉村知事には自分の能力を過信する傾向があり、『いち早く成功の果実を得て、みんなに褒めてもらおう』との思いから、多くの政策が見切り発車になる。
昨年4月に『コロナワクチンを9月までに実用化する』と言っていたことが典型例です。良かれと思って即断しても結果が伴わないため、最初は持ち上げていた大阪人が興ざめして一斉に手を放してしまった」
さらに評価の“暴落”に追い打ちをかけたのが、昨年11月1日に否決された「大阪都構想」だ。コロナ禍で感染拡大を懸念する声が上がる中、住民投票を行ない、大阪は11月中旬に第3波に突入。住民投票での人の移動が第3波を誘発したとの批判を浴びたが、その後の対応も問題だった。