コンビニが高くなったのではなく日本が貧しくなったという話はなかなか面白い。あくまで久保田さんの意見で反発もあるだろうが、長くコンビニをやってきて、30年を経て変わってしまった社会に対する実感は参考になる。昨年の有料化1ヶ月の大手コンビニ3社の調査ではレジ袋の辞退率は有料化前の3割から7割となり、業界の2030年の6割という目標をたった1ヶ月で実現してしまった。セブンイレブンが75%、ファミリーマートとローソンが76%である。久保田さんの言う通り購入点数がもともと少ないコンビニ購買層というのもあるだろうが、単価の高さがマイバッグ、エコ意識の高い層とリンクしている部分もあるのかもしれない。久保田さんが言及する困った客だってエピソードとしての一部であり、実際はむしろ客筋はよくなった、ということか。
「コンビニは時間を売ってる部分もあるからね、店でだいたいのことができる。高いけど、近所の業務スーパーじゃ埋めきれない部分もあるし、現役のサラリーマンはやっぱりコンビニ使うよね。あと富裕層の高齢者ね、年金暮らしだけど余裕があるって人」
スーパーの隣にあっても、商店街のど真ん中にあってもコンビニが価格競争の一点のみで潰れることは少ないだろう。PB(プライベートブランド)の魅力もあるだろうが、やはり便利とそれに伴う時間が購入できるところが大きい。コロナ禍、その優位性はさらに増している。高齢者に関しては10年前からコンビニ各社は現役世代だけでなくシニア層にターゲットをシフトしている。「コンビニは若者文化」なんて今は昔だ。
「だからレジ袋の有料はもう心配してない。でもスプーンの有料化となるとわかんないね」
コンビニは社会の縮図だよ
2021年3月9日、小泉進次郎環境大臣の肝いりで「プラスチック資源循環促進法案」が閣議決定された。コンビニで無料だったプラスチック製のスプーンやフォークを有料化することでレジ袋同様、プラスチックごみを抑制するのが狙いだ。小泉環境相は「自分でスプーンを持ち歩く人が増えていく。こうしたことでライフスタイルを変化させていきたい」と豪語しているが、久保田さんは首をかしげる。
「コンビニ弁当って職場はもちろん、車内で食べる人も多いからね。運送会社の人とか、サラリーマンが営業車の中で、とか」
コンビニの主力はやはりお弁当だ。このコロナ禍で外食を避ける傾向も強くなり、いわゆる「コンビニごはん」として売り上げを支えている。しかしレジ袋同様、そこにも国はメスを入れた。
「だから弁当容器も一部は紙になる。それはいいけど、スプーンやフォークは読めないね。忙しい客はレジ袋なんかいらないで弁当片手に出ていくけど、カレーやチャーハン、麻婆丼にスプーンは必要でしょう。本当に携帯するようになるかなあと。だからスプーンやフォークも紙にするって話だけど、しばらくは無理かもね」