中央合同庁舎5号館内のコンビニに入りエコバッグで買い物をした小泉進次郎環境相(手前左)。プラ製食器廃止はエコバッグのように浸透するか(時事通信フォト)

中央合同庁舎5号館内のコンビニに入りエコバッグで買い物をした小泉進次郎環境相(手前左)。プラ製食器廃止はエコバッグのように浸透するか(時事通信フォト)

 時間と便利を買ってる分、いちいち毎日スプーンを持ち歩くかという久保田さんの疑問はもっともだ。SNSではプラスチック製スプーンやフォークの有料化に否定的な意見が目立つが、調査会社によれば49.3%が賛成というアンケート結果も出ている(日本トレンドリサーチ調べ)。環境問題とは地味に格差問題でもある。

「それで弁当の売り上げが下がるなんて思ってないけど、いちいちまた聞くことが増えるのが面倒だよね。ポイントカード、レジ袋にスプーンやフォークの有無まであのビニールカーテンとマスク越しに聞くわけで。ほんと仕事とはいえうんざりだよ。ほとんど紙製にするって話だから、それまでは去年のレジ袋の時と同様、面倒かもね」

 コンビニ各社は今回の法案を受けて順次、プラスチック製品を紙にするという。スプーンも紙製で質のいい商品はすでに市販されている。

「別にしたいわけでもないのに上から降ってくる。まさにコンビニは社会の縮図だよ」

 現場のことなど考えず、パフォーマンス優先とばかり勝手に上から降ってくる。なんだか大きな話になったが、久保田さんの言いたいことはわかる。口ぐせの「うんざり」も減りそうにない。久保田さんは30年以上、コンビニの歴史とともに人生を歩んできた。昔はレジの横にアイスクリームケースが置かれていた。筆者はあれが大好きで部活帰りに買ったものだと話すと嬉しそうに当時を振り返ってくれた。

「あのころはミニスーパーみたいなもんで気楽だった。いまや公金扱うどころか店内にATMがある。自分の店が小さな町みたいになるなんて想像しなかったよ」

 コンビニは現代のコンパクトシティだ。彼らこそ都市の生活インフラの最前線を守っている。しかしそこは社会の縮図であり、社会の空気やその変化を真正面から受ける。コンビニが生活空間の一部になっているからこそ、客はその赤裸々な「人間の本性」をありのままにさらけ出す。そうしてエッセンシャルワーカーは、ときに社会のサンドバッグとなる。

「とにかく嫌なのが、レジ袋にしろスプーンにしろ、そういう切り替えの時の客の文句なんだよ。ほんとごく一部なんだけど、メンタルやられるんだ。ほとんどの客はそんなことないんだけど、数人ヤバいのがいると普通の客ぜんぶ頭から吹き飛んじゃうんだよ」

 なるほど、ネットで多数の称賛や賛同を得ても、数人の誹謗中傷ばかりに目が行ってしまうのと似たような感じだろうか。ともあれ、レジ袋にせよ、これから始まるスプーンやフォーク、ストローといったプラスチックの有料化は店員の責任ではない。そんなところで憂さ晴らしの因縁をつけて日ごろの鬱憤を晴らす輩、彼らこそ、このコロナ禍の社会の分断と、勝手な政府のパフォーマンスに加担する張本人だ。そしてエスカレートするプラスチックの排除 ―― プラスチックを使わなければ代替物により廃棄物が30%増えるというアメリカの大学研究グループによる報告や、代替の新素材による環境汚染がより進むというイギリスのシンクタンクによる警告もある。それは本当に効果的なのか、小泉環境相のパフォーマンスとは別にいま一度、そのエビデンスを冷静に再検証すべきと思うのだが ―― 。

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)/本名:上崎洋一。1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。全国俳誌協会賞、新俳句人連盟賞選外佳作、日本詩歌句随筆評論協会賞評論部門奨励賞受賞。『誰も書けなかったパチンコ20兆円の闇』(宝島社)、『ルポ 京アニを燃やした男』(第三書館)、近日刊『評伝 赤城さかえ 楸邨、波郷、兜太に愛されたコミュニスト俳人 』(コールサック社)

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