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鴻上尚史から新社会人・新入生の君たちへ「3つめの居場所を作ろう」

新生活を始めた人に激励のメッセージを寄せてくれた (c)TOWA

新生活を始めた人に激励のメッセージを寄せてくれた 撮影:(c)TOWA

 新年度が始まり、ほぼ1か月が経とうとしているこの時期、疲れやストレスを感じる新入生や新社会人は多いのではないか。新しい「場」に適応していくことは必要だが、周りに合わせて“同調”するばかりでは息苦しくなってしまう。そうなってしまいがちな新生活を乗り切るコツを、共著書『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』が話題の作家・演出家の鴻上尚史氏が伝授する。(取材・構成/岸川貴文)

 * * *
 新生活というのは「この先どうなるか」とワクワクする一方で、それとは裏腹の不安も抱えるようになるものです。僕自身も大学に入ったときには特に感じました。ただ、僕自身は周囲に簡単に同調することはなかったから、「同調圧力」をいろいろ感じました。

 授業より演劇サークルの活動に熱を入れていたけれど、先輩たちの言うことが納得できなければ、言うことを聞かないばかりか反論もしたし、愛想笑いもしませんでした。

 新入生のころ、先輩に呼ばれて同期7人と一緒に飲み会に行ったことがありました。先輩が僕たち後輩に順番に「おまえはどこに住んでいるんだ?」と訊いてきたんですね。だけど、その先輩は僕だけ飛ばして訊いていったんです。「俺はおまえを無視するよ」という明確なメッセージです。「こんなにわかりやすくやるんだ」とびっくりしましたね。

 先輩からすれば自分の演劇理論に反論してくる新人は生意気に映ったのでしょうね。でもあるとき、別の先輩がひとりやってきて、「俺はお前が正しいと思うよ」と言ってくれた。そう言われて、自分は間違っていないんだ、自分を変える必要はないんだと思ってホッとしました。当時サークルには50人ぐらいいたんだけど、30人もいれば一人は自分を理解してくれる人がいるものだと感じます。

 僕は大学在学中に「第三舞台」という劇団をつくりました。相変わらず先輩からは抑えつけられていたけれど、自分の劇団のファンが増えていけばその抑圧を跳ね返せるんじゃないかと思っていました。気がついたら、先輩たちの劇団よりはるかに観客動員数が多くなって先輩たちからの圧力は減り、「どうやらあいつはただの生意気なだけの奴じゃなさそうだ」と思われるようになったのです。

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