国内

刑事システムの不備を補うキャンセルカルチャー 被害者が叩かれる問題も

好感度の高い芸人のポジションを得ていたが枕営業炎上で大打撃

好感度の高い芸人のポジションを得ていたが枕営業炎上で大打撃

 芸能人などのセクハラ、不倫、薬物、交通事故などの不祥事をきっかけに、その芸能人が出演していたドラマや映画が公開中止になったり、過去の出演作のソフトが回収されたりすることが増えている。世間の「ルール」から逸脱したものが徹底的に抹消されることを「キャンセルカルチャー」と呼ぶ。。

 日本ではインターネットが普及したことで「キャンセルカルチャー」が広まった。テレビ解説者の木村隆志さんはこう語る。

「インターネットが普及する以前は、民衆が声を上げる場所がなかった。1990年代半ば、野島伸司さん脚本のドラマが猛烈にバッシングされたこともあり、テレビに対する批判が高まっていった。そして2003年に設立されたBPO(放送倫理・番組向上機構)が、民衆の声を代弁する立場となりました。ですが、テレビ局に批判が殺到することはあっても、民衆が個人を“干す”ようなことはありませんでした。『フライデー襲撃事件』(1986年)のビートたけしさんでさえ、レギュラー番組にはやがて復帰していました」

 石田純一(67才)は1996年に“不倫は文化”で時の人となった数か月後、『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)のメーンキャスターに就任している。1年で降板したとはいえ、いまでは考えられないほど「ゆるい」世の中だった。

「インターネットが普及すると、個人の声が届くようになった。2008年に倖田來未さん(38才)が『35才を過ぎると羊水が腐る』とラジオで発言すると、瞬く間にネットで大炎上し、倖田さんは謝罪とともに活動を自粛しました。謝っても許さないという、現代のキャンセルカルチャーの走りといえます」(木村さん)

 横山やすしや勝新太郎など、「破天荒」なスターが愛される時代は終わった。精神科医の和田秀樹さんは語る。

「昭和の芸能人は、“芸”が優れていればよく、人格まで求められませんでした。しかし最近は、政治や教育問題に切り込むコメンテーターにも芸能人が大勢起用されるようになり、厳しくモラルを求められる存在になった。今回の出川哲郎さんの一件(後述)は、20年以上前なら見逃されたかもしれませんが、現代の芸能人である限り『クリーン』な存在でなければ許されないのです」

「有名税」といわれるように、華やかな世界に生きる芸能人は、嫉妬の対象になりやすいことも問題だ。

「『エンビー型嫉妬』といって、人には、対象者を引きずりおろして自分が上に立とうとする心理があります。有名人や社会的に上の立場の人が落ちていくのを見ることで、快楽を得られるのです。

 さらに、不祥事を起こした芸能人を引きずりおろし、正義の味方になったような錯覚を起こす。あまり健全な方法ではありません」(和田さん)

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト