激しくスピーディーな攻防は「ハイスパート・レスリング」と呼ばれた(写真/AFLO)
この下克上には実は仕掛け人がいたと、藤波は見ている。
「今考えるとタイミングといい、場所といい、誰かの入れ知恵なしにはあり得ない。恐らく猪木さんでしょう。試合後の控え室には長州の姿はなく、猪木さんに『バカヤロー!』とどやされました。自分で焚き付けておいてね(笑い)」
『週刊ゴング』元編集長で長州の番記者を長く務めた金沢克彦氏は言う。
「猪木は長州に『ワインは寝かして美味しい時にポンと開けるんだ』といったヒントを与えたそうです。それで彼が語るには、憎かったわけじゃないけど『藤波に行くしかないだろ』と。だからこそ、本人の中には今も挑戦を受けてくれた感謝の気持ちがあり、節目のインタビューでは必ず藤波の名前を出します」
長州は2019年に引退し現在はテレビで引っ張りだこ。藤波は今年デビュー50周年を迎える。
「長州も僕も、猪木イズムをそれぞれの形で継承しているんです」(藤波)
※週刊ポスト2021年5月7・14日号
長州力の得意技「サソリ固め」(写真/AFLO)