室井滋さんは『しげちゃん』で絵本の世界に入った
〈2011年に自身の幼少期をモデルにした『しげちゃん』(金の星社)で絵本の世界に入った女優・室井滋さん。以後主に、室井さんが文を、絵本作家・長谷川義史さんが絵を描くスタイルで絵本を共同創作している。一方の五味太郎さんは、1973年に絵本作家としてデビュー。代表作の『きんぎょが にげた』『みんな うんち』を含めて計400冊以上の本を、40年以上にわたって手がけてきた。話題は、自然と絵本の話に──〉
室井:五味さんは1973年にデビューされていますが、この世界に入るのは大変でしたか?
五味:俺はわりと苦労せずに、ふわっとこの道に入ったの。工業デザインを学んでいたんだけれど、気がついたら絵本作家になっていたという感じ。
室井:私の絵本デビュー作は『しげちゃん』。男の子みたいな名前をなかなか受け入れられなかった自伝的な絵本です。女優なのになぜ絵本をと思われるかもしれませんが、もともとはエッセイを書いていて、昔、雑誌に連載するエッセイの挿絵を、絵本作家の長谷川義史さんにずっとお願いしていたんです。
五味:長谷川? よく知ってるよ。俺とアイツは全然違うタイプの作品を描くけど、お互いを認め合ってる。だから一目置いて、一定の距離を取りつつも、ハグするって感じだよね(笑い)。絵本作家って、みんな仲良しなの。
室井:そうだったんですか。私の場合、長谷川さんが絵本作家として有名になる前から挿絵をお願いしていて、偶然10年ほど前に長谷川さんの個展を訪れた際、来ていた出版社のかたから声をかけていただいたのがきっかけです。でも、私が書くのは絵本の原作だけ。絵を描けないので、ちょっと悔しいですね。
そういえば、『しげちゃん』のときに、編集さんにもう1つ、おじいちゃんの尿瓶をテーマに本を作りたいと伝えたのだけれど、そっちは却下されました(笑い)。
五味:尿瓶?
室井:五味さんの『みんな うんち』を読んでいて、影響を受けたのもあったのかも(笑い)。一見タブーとも思える「うんち」がテーマだけど、子供たちも面白いって読んでいるじゃないですか。だから尿瓶も絵本にできると思ったんです。でも編集さんから「デビュー作が尿瓶の話でいいんですか」と言われて(笑い)。いつか絵本にしたいです。
五味:うーん。そこまで悪いテーマだとは思わないけどね。尿瓶だって、魅力的な尿瓶の絵があれば、本になるかもしれない。
室井:尿瓶でも?