五味:長谷川にイラストを描かせればいい本ができるかも(笑い)。もちろん、ストーリーの切り口も大事。花瓶や土瓶も登場させて、尿瓶と並べてみるとかね。「おじいちゃんはお漏らしをしないために、尿瓶にする日もあれば、土瓶や花瓶にもする」とか。今日は何の瓶にしようかなって感じでさ。
室井:さすが!
五味:最近はバカな編集者が多いんだよ(笑い)。
室井:バカ?
五味:絵本って絵も大事だから、企画を聞いたときに出来上がった絵を想像するのも編集者の仕事。「編集者」という名刺を持っていても、中身は素人なのが増えてるよね。俺が絵本作家を始めた頃のような編集者って、今はもういない。
俺らの仕事って、ちょっと気取って言うと“クリエーション”なんだよ。物を創り出して、場合によっては創り直す。それを楽しんでできる人って少ないと思う。
【プロフィール】
五味太郎(ごみ・たろう)/絵本作家。1945年東京都生まれ。1973年に『みち』を刊行し、以降発表した作品は400以上。世界25か国以上で翻訳・出版されている。『たべたの だあれ』『きんぎょが にげた』『みんな うんち』など著書多数。3月に最新刊『まだまだ まだまだ』が発売され話題になっている。
◇『まだまだ まだまだ』(偕成社作・絵/五味太郎) 「よーい、どん!」で始まったかけっこ。みんなが無事にゴールしたと思ったら、ひとりが「ぼくはまだまだおわりません!」とかけっこを続ける。町のなかやビルのあいだ、畑の中や森のなか、まだまだ、まだまだ、続いていく……。
室井滋(むろい・しげる)/女優。富山県生まれ。早稲田大学在学中に1981年『風の歌を聴け』でデビュー。多くの映画賞を受賞。『ファインディング・ドリー』などで声優も務める。著書多数。最新刊はエッセイ集『ヤットコスットコ女旅』、絵本『しげちゃんの はつこい』。
◇『会いたくて会いたくて』(小学館・作/室井滋 絵/長谷川義史)
ボクは老人ホームにいる大好きなおばあちゃんが大好き。ママに「いまは行っちゃダメ」といわれるも、こっそり一人で会いに行くと……。相手を大切に思うほど会えないいま、おばあちゃんとボクの、糸電話を使った会話が胸に沁みるとSNSでも大反響。
構成/戸田梨恵 撮影/黒石あみ
※女性セブン2021年5月20・28日号