1年目に主軸として都市対抗出場に導き、2年目の都市対抗はJFE東日本の補強選手で優勝を味わった。球場でプレーを観戦したDeNAのかつてのチームメートたちに「おまえがあんな楽しそうにプレーしている姿を初めて見たよ」と声をかけられたという。
松本には気になる後輩がいる。早大の2学年後輩で共にプレーした日本ハム・斎藤佑樹だ。現在も時々会食するなど交流がある。斎藤は松本と同じ大卒ドラフト1位で入団したが、昨年は1軍登板なしに終わるなど、2018年以降3年連続未勝利と苦しんでいる。斎藤のことを聞くと、少しの沈黙を置いた後にこう語った。
「辛いだろうなあ……。置かれている立場は本人が一番分かっていると思います。僕とは比較にならないほどアマチュア時代から注目され続けてきましたが、素直な奴ですよ。大学時代は同学年の大石(達也)、福井(優也)の方が強い球は投げていたけど、斎藤はテンポが良かった。勝ち運も、あのテンポの良さが大きな要因だと思う。野手は守りやすいですから。
プロに入ってモデルチェンジしたり、色々やっていると思います。昨年のオフにも『1年でも長くプロでやってくれ』と本人には伝えました。今の斎藤は精神的に野球を楽しめない状況かもしれないけど、それでも楽しんでほしい。やっぱりプロ野球選手でいる時は幸せですから」
プロの世界で9年間身を置き、悩み苦しんできた時間が長かっただけに胸中を推し量れる部分がある。穏やかな口調で送った斎藤へのメッセージには愛情がこもっていた。
取材・文/フリーライター・平尾類