雷門。5月9日10時40分。浅草の代表的な観光スポット・雷門も人の姿はまばら。演芸場「東洋館」も東京都の無観客要請に応じたため、シャッターが降りていた
ゴールデンウィーク中は1日平均1万5000円ほどの売り上げで、「夜間働いても稼げないから朝方にシフトしたんですが、生活ギリギリですよ」と横溝さんは嘆くのだった。
同じ日の午後、葛飾・亀有で乗り込んだのは、乗務歴19年の北島重雄さん(68)。見るからに豪華なトヨタ・クラウンのドアが開き、革張りのシートに座ると実に心地よい。
「一昨年は儲かってね。だからこの車、その年末に金融公庫で数百万円のローンを組んで買ったんです。そうしたらコロナでしょ。もう笑うしかない(笑い)」
年明けから2度の緊急事態宣言が発令されたことで、昨年12月と比べて売り上げは半減。今は月20万円がせいぜいという。
「コロナが収束しても元通りにはなりませんよ。テレワークが定着して、外で酒を飲む習慣も変わる。我々のお客さんは経費を使える会社勤めの人。今後は経費も縮小されそうな気がして、正直怖いですよ」
東京の感染者数は高止まりし、ワクチン接種も遅々として進まない中、五輪開催も迫る。タクシーの車窓から見た首都・東京は、不安の影ばかりが映っていた。
撮影/佐藤敏和、内海裕之 取材/末並俊司
※週刊ポスト2021年5月28日号