東京・八王子市の賃貸アパートの外階段が崩れ、住人の女性が転落しした事故は、その施工会社が間を置かずに自己破産を申請したことが非難の的となっている。そして、他に同じような危険な物件が複数あること、短期間にずさんな工事を繰り返していたことが明るみに出てきた。なぜ、このような危険な賃貸物件が増えてしまったのか、ライターの宮添優氏がレポートする。
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神奈川県相模原市の建設会社「則武地所」が施工したアパートの階段が崩れ、住人の女性が落下し死亡した事故から、まだ2ヶ月も経っていないが、負う責任を少しでも軽くしようとするかのようなことが相次ぎ、これまで蓋をしてきた不都合な話が吹き出し続けている。
則武地所はその後、およそ6億円の負債を抱え破産。事故のあったアパート以外にも施工に関わった物件で不具合が相次いで発見され、元社員がニュース番組で、同社の杜撰な工事の実態を告発している。だが、混乱はこれだけで終わりそうにもない。
「事故報道の後も建設中の物件があり、工事は続いていました。でも、破産の話が出た途端に全てストップ。諸費用や人件費の支払いも当然まだで、頭を抱えています」
東京都内の建設会社代表・中島孝一さん(仮名・30代)は、これまでにも数棟の則武物件の工事に関わってきたが、この一年ほどの間に、さまざまなトラブルがあったことを明かす。
「則武から入金が遅れる、入金がない、ということが相次ぐようになり、同業者と『大丈夫か』と話していたのですが、工事自体もかなり杜撰になっていました。建物自体は則武の社員や、則武が契約している大工が担当し、水回りや外壁などを我々外部の事業者が請け負う形。そして報道にあったように、ありえない場所に木材を使用したり、壁が曲がっていたりしたんですよ」(中島さん)
中島さん自身、あまりに酷い工事現場の様子から、則武との付き合いを考え直さなければならないと思っていたところに起きた悲劇だった。請負業者という立場上、則武側の杜撰な工事を告発できなかったと悔やむ。
「責任を感じています。社員が『早くやれ』とハッパをかけ、皆うんざりして作業に当たっていたのも事実。現場では工期が最優先、チェック機能もないに等しく、起こるべくして起きたという他ない」(中島さん)