野田氏には二階氏、稲田氏には安倍氏
派閥に頼っていては、支援は見込めない──そんな2人は、次の総裁選に向けて女性議員の「推薦人獲得競争」を展開している。
野田氏は塾長を務める自民党「女性未来塾」に女性候補者育成コースを開講して候補者を募集。一方で、稲田氏が委員長代行を務める「自民党女性活躍推進特別委員会」では次期衆院選で自民党比例代表候補の15%を女性にする提言を議論している。
さらに、稲田氏が自民党女性議員でつくる「女性議員飛躍の会」や「こども宅食推進議員連盟」を主宰しているのに対抗して、野田氏は「出産費用等の負担軽減を進める議員連盟」や超党派の「女性国会議員増を目指す勉強会」などを発足させた。
野田氏と稲田氏は、政策面でも「女性と子育て」の分野を競い合っている。
不妊治療の末に50才で出産し、心臓などに障害を持つ男児を育てている野田氏は早くから「不妊治療への助成」「代理出産の解禁」「幼児教育の義務化」「出産一時金の増額」など、女性と子育て重視の政策を提唱してきたことで知られる。
出馬を断念した2018年の総裁選の際には、女性や高齢者、障害者などすべての国民が活躍できるフェアな制度をつくるという内容の「落ち着いて、やさしく、持続可能な国へ」という政策集をまとめた。
ジェンダーギャップの問題についても、「法律婚と事実婚をイコールにして、選択的夫婦別姓を認め、配偶者控除の撤廃が必要」というのが持論だ。
一方の稲田氏は自民党内で「タカ派のマドンナ」と呼ばれ、これまでは憲法改正や靖国神社参拝などを主張してきた。最近は女性重視政策に大きくスタンスを変え、「婚前氏(旧姓)続称制度」(選択的夫婦別姓)やコロナ対策でのシングルマザーへの追加給付金を訴えている。
政治ジャーナリストの野上忠興さんが総裁選出馬の見通しをこう語る。
「野田氏には二階俊博幹事長(82才)、稲田氏には安倍前首相という実力者が応援団について、女性議員の囲い込みを始めました。総理・総裁候補として男性議員も含めた党内の評価が高いのは野田氏です。卵子提供による出産では心ない批判を浴び、苦労しながら育児と議員活動を両立させてきた。その分、人の痛みもわかるし、包容力もあるという評価です。
稲田氏は安倍前首相に気に入られて“出世街道”を上ってきたが、防衛大臣時代の失敗で政治手腕を疑問視する声があることがネックです」