「東京五輪中止」が隠し球か
仮に2人が女性議員の支持を得て総裁選に出馬しても、当選して首相になるには自民党国会議員の9割を占める男性議員の支持が必要だ。
「自民党実力者に担がれて首相になったら、男性優位の政界の“操り人形の女性首相”と思われてしまう。それでは意味がない。そう思われないためにも、『自力でやっている』ことを提示することが必要です」(全国紙政治部記者)
そこで野田氏や稲田氏が提唱するのが候補者や議員の一定数を女性枠にする「ジェンダー・クオータ制」の導入だ。クオータ制は、世界約130か国で採用。台湾の蔡総統やニュージーランドのアーダーン首相など女性のトップが誕生したのは、クオータ制で女性の国政進出(台湾約42%、ニュージーランド約48%)が進んだからともいわれている。
野田氏は5月12日、超党派の女性議員の勉強会で「いったん女性が(責任ある立場を)担えば、男性じゃないとできないと思われている仕事でも、女性でもできるんだと理解してもらえる。そのいちばんの早道は、クオータ制で『見える化』をすること」と発言し、稲田氏も「比例候補のなかに『女性枠』を設けるのはどうか」(女性セブン2021年4月8日号)と提案している。
しかし、実現は簡単ではない。「女性枠をつくると、それによって1つ議席がなくなるわけです。つまり、男性政治家にとっては、政治生命にかかわってくる話になるんです」と稲田氏が語る通り、男性議員から根強い反対があるからだ。
もう1人、男社会の政界に風穴を開ける破壊力を秘めているのが“ガラスの天井”を突き破って女性初の東京都知事になった小池氏だ。自民党議員時代は女性議員で唯一、2008年に総裁選に出馬した経験を持つ。
「2017年の総選挙の際、小池氏は都知事の立場で新たに『希望の党』を立ちあげ、野党から多くの議員を合流させて政界再編を仕掛けた。自民党は一時“小池新党に負けるんじゃないか”とパニックになりました。新党は途中で失速したが、あのとき、小池氏が出馬して勢いが増していたら、政権交代で小池首相の可能性もあった。
小池氏は総裁選の経験から、自民党の中にいても女性が首相になるのは難しいとよくわかっており、チャンスがあればもう一度、新党で勝負を賭ける可能性がある。
現在、開催の是非が大きな話題になっている東京五輪の中止を突然訴えて、国民の求心力を高め、一気に国政に出てくるという予測もあります」(野上さん)
※女性セブン2021年6月3日号