リカーリングビジネスへの転身が奏功
だからこそ、平井社長の時代にハードとソフトの融合を進めていくのは当然の流れともいえた。それでも就任間もない業績低迷期には、アクティビスト(モノ言う株主)から毎年のように映画や音楽のエンタメ事業を売却するよう求められていた。
その要求に従えば、一時的にソニーの利益は増え、株価も上がっただろう。しかし平井氏はそういう要求をはねのけ、両輪経営を貫いた。そしてそれがソニーの新しいビジネスモデルとして結実した。
ソニーは平井社長の時代から、リカーリングビジネスに力を入れている。リカーリングとは継続的にお金が落ちる仕組みのことで、サブスクリプション(定額制)などがそれにあたる。
たとえば1999年に発売したロボット犬「アイボ」は、売り切り、つまり家電の延長線上にあった。ところが平井社長時代に復活した新生「アイボ」は、毎月会費を払わなければいけない。
昨年11月に発売されたソニーの新型家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」(時事通信フォト)
ゲーム部門が大きな収益を上げているのも、会費が必要な「プレイステーションプラス」の会員が全世界に5000万人近くいるためだ。このリカーリングビジネスへの転身は、繰り返しになるが、50年以上にわたってソフト事業を手掛けていたからこそ可能になった。つまりソニーGの純利益1兆円は、これまでの歴史と、そのレガシーの上から生まれたものだ。