樺沢:私は「会社が辛い」といった相談を受けると、「複数のコミュニティに所属すべきだ」と話します。学校も同様です。ひとつのコミュニティのみで生きていると、先程の話のように、そこが辛ければ生きていけなくなってしまいますが、たとえば、学校があまり楽しい場所でなかったら、水泳スクールでも受験塾でも趣味のクラブでも何でもいいのですが、別のコミュニティいくつかに所属しておくと、ひとつの場所で辛くなったときの精神的なリスクヘッジになります。
和田:リスクヘッジであると同時に、たくさんのことにトライすると、自分が輝ける場所が見つけられる可能性が高まります。見つけられれば、そこで自己肯定感が上がるという大きな利点があります。
樺沢:ですから、会社が辛かったら、会社はお金をもらう場所と割り切って、アフター5の世界を存分に楽しんで生きるという考え方は大いにありだと思います。
和田:そうですね。近著『みんなに好かれなくていい』にも書きましたが、自分ができないこと・うまくいかないこと(短所)にフォーカスすれば、辛くなるのは当然です。そうではなく、できること・輝けること(長所)に視点を移すことがとても重要ですね。心理学の世界では、「長所伸展」という考え方もあります。
樺沢:それが、人が悩みから解放されるための第1の秘訣ですね。
和田:2つめの鍵は、「情報を多く持つこと」です。日本人の特徴のひとつだと思いますが、予期不安は大きいのに、それに対するソリューション(対処法)を考えない、という傾向がありますね。たとえば、がんになることを皆とても恐れていますが、じゃあ、がんになったらどこのどんな医師にかかるかなど、何も調べない。何もしなければ、不安というものは大きくなるばかりです。
樺沢:私はYouTubeで3000本の動画を配信し、それぞれ一つの悩みに対する対処法を話しています。ですから、人の悩みの9割以上には答えているはずですが、それを見ずに、同じような質問が毎日30件は来ます。検索すればどんな情報でも手に入りやすい時代なのに、それでもリーチしない人たちが多い。