国内

党首討論での「思い出話」に見え隠れする五輪開催の2つの思惑

菅義偉・首相(時事通信フォト)

「思い出話」にネットでは批判が続出(写真/時事通信フォト)

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、党首討論での菅義偉首相の発言について。

 * * *
 2年ぶりに行われた5月9日の党首討論。菅首相へのわずかな期待は、これまで通りの答弁によって予想通りに裏切られた。五輪の開催理由や目的について少しは表現を変え、はっきりしたことを話すのかもと思って見たのだが、一辺倒の答弁とともに出てきたのはまさかの思い出話。それも1964年の東京五輪。なぜここで思い出話なのか。

 女子バレーボールで活躍した東洋の魔女、マラソンのアベベ・ビキラ選手に柔道のアントン・ヘーシンク選手の名前を上げ、「あの瞬間を忘れることはなかった」、「鮮明に記憶している」と話した菅首相。首相にとって57年前の東京五輪のインパクトは大きく、記憶や思い出が持つ意味もまた重要なのだろう。人間には、時が経つごとに記憶や経験が美化されていくという「バラ色の回顧」と呼ばれるバイアスがある。実際に違っていても、「あの時は良かった」と思い出す傾向があるのだ。

 例え大会が混乱しても開催してしまえば、「あの時はコロナ渦で大変だったけどやって良かった」、「良い大会だった」と人々の記憶が変わっていく可能性はある。そして菅首相の名前は、コロナ渦でも大会を開催した国の首相として人々の記憶に、歴史に残るかもしれない。

 スポーツを通して希望や勇気を伝えたい、世界の人たちに見てもらいたいという強い願望が首相にあることは分かる。開催意義もそこにあるのだろう。だが彼はこうも述べた。「世界が新型コロナという大きな困難に立ち向かい、世界が団結してこれを乗り越えることができた。そうしたことも、やはり世界に日本から発信したい」と。

関連記事

トピックス

サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《総スカン》違法薬物疑惑で新浪剛史サントリー元会長が辞任 これまでの言動に容赦ない声「45歳定年制とか、労働者を苦しめる発言ばかり」「生活のあらゆるとこにでしゃばりまくっていた」
NEWSポストセブン
「第42回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
《ヘビロテする赤ワンピ》佳子さまファッションに「国産メーカーの売り上げに貢献しています」専門家が指摘
NEWSポストセブン
王子から被害を受けたジュフリー氏、若き日のアンドルー王子(時事通信フォト)
《エプスタイン事件の“悪魔の館”内部写真が公開》「官能的な芸術品が壁にびっしり」「一室が歯科医院に改造されていた」10代少女らが被害に遭った異様な被害現場
NEWSポストセブン
香港の魔窟・九龍城砦のリアルな実態とは…?
《香港の魔窟・九龍城砦に住んだ日本人》アヘン密売、老いた売春婦、違法賭博…無法地帯の“ヤバい実態”とは「でも医療は充実、“ブラックジャック”がいっぱいいた」
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、インスタに投稿されたプライベート感の強い海水浴写真に注目集まる “いいね”は52万件以上 日赤での勤務をおろそかにすることなく公務に邁進
女性セブン
岐路に立たされている田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
“田久保派”の元静岡県知事選候補者が証言する “あわや学歴詐称エピソード”「私も〈大卒〉と勝手に書かれた。それくらいアバウト」《伊東市長・学歴詐称疑惑》
NEWSポストセブン
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
「少女を島に引き入れ売春斡旋した」悪名高い“ロリータ・エクスプレス”にトランプ大統領は乗ったのか《エプスタイン事件の被害者らが「独自の顧客リスト」作成を宣言》
NEWSポストセブン
東京地裁
“史上最悪の少年犯罪”「女子高生コンクリート詰め事件」逮捕されたカズキ(仮名)が語った信じがたい凌辱行為の全容「女性は恐怖のあまり、殴られるままだった」
NEWSポストセブン
「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路とは…(写真/イメージマート)
【1500万円が戻ってこない…】「高級老人ホーム」に入居したある70代・富裕層男性の末路「経歴自慢をする人々に囲まれ、次第に疲弊して…」
NEWSポストセブン
橋幸夫さんが亡くなった(時事通信フォト)
《「御三家」橋幸夫さん逝去》最後まで愛した荒川区東尾久…体調不良に悩まされながらも参加続けていた“故郷のお祭り”
NEWSポストセブン
麻原が「空中浮揚」したとする写真(公安調査庁「内外情勢の回顧と展望」より)
《ホーリーネームは「ヤソーダラー」》オウム真理教・麻原彰晃の妻、「アレフから送金された資金を管理」と公安が認定 アレフの拠点には「麻原の写真」や教材が多数保管
NEWSポストセブン
”辞めるのやめた”宣言の裏にはある女性支援者の存在があった(共同通信)
「(市議会解散)あれは彼女のシナリオどおりです」伊東市“田久保市長派”の女性実業家が明かす田久保市長の“思惑”「市長に『いま辞めないで』と言ったのは私」
NEWSポストセブン