先頭部に「無限」のナンバープレートが付け替えられた人気漫画『鬼滅の刃』仕様の蒸気機関車。2020年11月、JR博多駅(時事通信フォト)
河村市長の走らせたいという強い希望により、B6は富山県の鉄工所へ修理・点検に出された。しかし、時代とともにSLは製造されなくなり、走らなくもなっている。そうした事情もあり、SLを点検・修理できる職人や工場は限られている。ましてや、B6は国内でも唯一という貴重な車両。点検・修理は容易ではなかった。
富山県の鉄工所に運ばれたB6は、点検・修理のためにバラバラに解体された。しかし、その後は修理が進まず、放置されていることが名古屋市議によって明らかになっている。
河村市長はB6を走らせたという意向を崩していないが、現段階で運行の見込みは立っていない。名古屋市議会は費用が増大することも含め、市長に対してB6の問題を糺している。
仮に、B6がきちんと修理されても、あおなみ線で復活運転するにはクリアしなければならないハードルは多い。
SLの動態保存には、石炭を燃やし水蒸気を発生させることで動かす蒸気機関での再現と、圧縮空気を動力にした再現の2つがある。蒸気機関での再現は煤煙・振動・騒音といったハードルをクリアしなければならない。一方、圧縮空気ならそうした問題は起こりにくく、しかも蒸気機関より低予算で再現できる。そうした事情から、近年は圧縮空気で再現するケースが増えている。
B6を展示・保存する名古屋市科学館の担当者も「復元したB6は圧縮空気による動態で保存する方針にしています。圧縮空気による動態保存でも、子供たちに科学を実体験してもらえると考えています」と、実際の線路で走らせることにこだわっていない。
科学館で第2の人生を歩むことが約束されているB6は、まだ幸せなのかもしれない。公園などに保存されている車両の多くは、歳月とともに朽ち果て、行き場がなく処分されてしまうのだ。それは鬼滅ブームで人気急上昇中のSLも例外ではない。