カフェやレストランとして転用はお断りしている

 京都府与謝野町に所在する加悦SL広場は、貴重な鉄道車両を27両も保存・展示していた。しかし、昨年3月に閉園。同園には3両のSLが展示されており、そのうち重要文化財に指定されている車両もあった。閉園によって、鉄道ファンから車両の行く末が案じられていた。

「閉園後、SL広場のある与謝野町、地元有志による加悦鐵道保存会とも協議を重ねてきました。現在、19両の引き取りが内定しています。残りの8両についても引き取りたいという話をいただいています」と話すのはSL広場を運営する宮津海陸運輸の担当者だ。

 SL広場の車両は、博物館級の貴重な車両が並んでいる。貴重な車両を地元に残しておきたいとの声も強いが、予算やスペースの問題もあり全車両というわけにはいかなかった。27両のうち、SLの123号と付随客車のハ4995・ハ10の3両が地元に引き取られることで話はまとまった。

 また、長門鉄道で活躍したSLの103号は山口県下関市へ、南部鉄道で活躍したDC351は青森県五戸町へと引き取られることになった。これらは里帰りとなる。

「実は譲ってほしいという打診は全車両にあります。しかし、カフェやレストランとして転用したいというお申し出はお断りさせていただいております。あくまでSL広場はミュージアムです。そうした意図から、きちんと展示・保存をしてくださる方にお譲りしたいと考えています」(宮津海陸運輸の担当者)

 鉄道車両の保存・展示には、資金や人手、行政や住民の理解など越えなければならないハードルがいくつもある。昨年からのコロナ禍もハードルを上げた要因のひとつだ。

 鬼滅によって人気復調の兆しを見せたSLだが、その裏では技術継承・費用負担、これまで清掃活動を担っていたボランティアの高齢化といった問題が重なる。これらの要因により、引退した車両の維持・管理は年々難しくなっている。そして、人知れず処分されてしまう車両もある。

 残したいという気持ちだけで、車両の保存・展示は難しい。それでも行政や市民の間に車両を守ろうとする気概と機運が残っていることは救いがあるのかもしれない。

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