友人がいない老後は不幸だ――そんな世間の思い込みに苦言を呈するのは元参議院議員の筆坂秀世氏(73)だ。
「相談したり世話し合う友人がいないことが寂しいだなんて、余計なお世話だよ」
そう切り捨てる筆坂氏は、「親しい友人がいない」という高齢者は、(2021年「高齢社会白書」の)3割より多いとみている。
「高齢になると友人付き合いは間違いなく減る。私もかつて政治活動で付き合っていた連中とも音信不通みたいなもの。コロナ前には政界の後輩や同年代の元政治家とは月に2、3回は飲んでいたが、それも全くなくなった。今でも後輩から飲みの誘いのメールはくるけど即断わっている(笑い)。年に4、5回やっていた講演も行けば参加者との交流で会食したりしたけど、今は断わっているからそれもない。
正直なところ、交流や講演会も結構疲れるものだったから、なくなってから楽になったよ。コロナ禍を理由に友人付き合いが減った部分もあるけれど、今となってはそれほど必要でもなかったんだろうと思いますね」
友人付き合いの代わりに増えたのが、妻との時間だ。筆坂氏が続ける。
「20年前は何の苦にもならなかったことが今は苦になるからね。年を取ると老化現象として精神的なスタミナが擦り切れていく。我慢や堪えることができなくなってくるから、他人との付き合いも難しくなってくる。僕も気を付けていて、近所づきあいとして同年代夫婦と挨拶して立ち話くらいはするけど、自宅に遊びに行ってどうこうということはない。そもそも、60過ぎたジジイに“友達になりたい”って近づいてくるのは詐欺師ぐらいだろう(笑い)。
この年になって人に頼るようなことはしたくないから、相談や世話をし合うような関係は女房だけでいいんです。子供たちにだって世話になりたくないのだから、友人に相談したり世話になるなんて論外だよ」
ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(81)も、「友人」の役割が変わっていると語る。
「一人で抱えきれないような問題や込み入った相談は、友人ではなく家族で済ませます。高齢者になって主に気になるのは法律関係と医療関係ばかり。それらは専門家に話せばいい。友人というのは、僕にとっては第一線から身を引いてぽっかり空いた時間を埋める気晴らしのような関係でいい。何でも相談したり世話し合ったりするような“親しい友人”は必要ないと思っています」